第四十四話
私の気持ち



彼から突然の電話があって、今から私の家に来たいと言った。
まだ自分が頼られてる、必要とされているのが嬉しく感じ、私は良いよと言った。

「何か・・・あった?」

「・・・・・」

「・・・いいよ、上がって。」

すごく疲れた表情の彼・・・相当な事が起きたのかな?
私を頼るって事は、今の彼女の事・・・だよね。

思えば、彰と別れた後も、私はやっぱり彰の事が好きだったのかもしれない。
彰と別れた後も、寄ってくる男の人はいた。
彰より全然カッコよくて、優しい人もいた。
でも、何故か彰の事ばかり気になって・・・

彼はどこか放っておけない所がある。
一人じゃ危なっかしくて、悩んで、そのまま沈んで行ってしまいそうな彼・・・
ネットゲームで知り合ったときから、彼は誰かに甘えたかったんだろう。
彼が今までどんな人生を送って来たのかは分からない。

でも、出会って、次第に私を頼っていく彼・・・
少しずつだけど、明るくなっていく彼・・・
どんどん変わって行く彼に、私は恋をし始めた。

実際に付き合う事になって、自分でも私達は合っているって思った。
私は彼を守って、彼は私と付き合う事で自分に自信を付けて行ければって・・・

私は彼が好きだから、彼は私が好きだから・・・
私は彼を救ってあげたいから、彼は私を頼りにしてるから・・・
だから私達は身体を重ねた。お互い初めての性行為・・・
彼はどうしたらいいのか、落ち着きが無くて手が震えていたっけな。
私もお姉さんぶって大丈夫だよって言うけど、初めてだから本当はすごく怖くて、痛くて・・・
それでも彰を不安がらせないように、痛みを我慢し続けた。彰がイクまで・・・

彰はイッた後、私に謝った。自分だけでごめんって。
私は初めてだから、処女だからいきなりイクなんて無理だし、気にしないでって言った。
最初だから痛くてイケないのは当然で、回数を重ねればイケるようになる。
そう思った。彼も納得してくれた。
でも、実際はそうじゃ無かった・・・

それからも何度も身体を重ねたけど、一度も私がイク事は無かった。
気持ち良い事は気持ち良いんだけど、まだ経験が浅いからなのかもしれない。
彰に何も責任は無い。私の体質なんだから・・・
でも彼は全て自分の責任だと思い込む性格だ。
せっかく自分に自信を持ち始めたのに、その自信がどんどん崩れていって・・・

自信が完全に崩れ去った彰は、私から離れてしまった。
私は彰を救うつもりが、逆に傷付けてしまったんだなって、ずっと悩んでいた・・・

別れてからも、ずっと彰の事が気になって・・・
もう彰は自分を忘れているかもしれないのに、それでも・・・

もし、また会える事があったら、今度はちゃんと救ってあげたい・・・
彼を不安がらせたくない・・・そう思っていた。

だから・・・
また彰に会えたときはすごく嬉しかった。
たまたまガーデンに行ったら、店員さんが彰だったのは驚いたけど。

もっとゆっくり話したくて、あの時の事を謝りたくて・・・
そして、今度こそ私が守ってあげたくて・・・
もしかしたら、夜ガーデンに行ったら、まだ彰がいるかもしれない。
そう思って行ったら彰がいて・・・

でも・・・でも彼には新しい彼女がいたんだ・・・

私とはまったく違うタイプの・・・男性が守ってあげたくなるような子だった。
やっぱりショックだったよ。
新しい彼女がいるのもそうだけど、私とは全然違うタイプだったから。
彰はもう私がいなくても大丈夫なんだなって、
守られる側から、守る側になったんだなって・・・

「彰、コーヒーだよ。」

「ありがと・・・」

彼はそんなんじゃない・・・
私が思ってる以上に脆いんだ。本当に些細な事でも落ち込んで・・・

彼と、彼女のお母さんの話が終わって、私は彰に声を掛けた。
新しい彼女がいるから、本当はもう関わらないようにしようと思ったけど・・・
お母さんと話してる間、昔と変わらない思い詰めた顔が見えたから・・・

やっぱり放っておけなくて、例え彼女がいても・・・
私に出来る事があるなら何とかしてあげたい。そう思って家に呼んだ。

私は・・・自分で自分が最低だと思ったよ・・・
何だかんだ奇麗事を言っても、結局彼をまた自分のものにしたかったんだ。
彼に優しくして、それで彼がまた私を見てくれるなら・・・
あの子を守る男になるより、彰は私に守られた方が良いんだよ・・・

彼とあの子の関係を応援するような事を言ったりしたけど、
本当は早く別れれば良いのにって思ってた。

彰は、私の事をどう思ってるのか分からない。
相談に乗ってくれるお姉さん?そういう感じなのかな。
でも、私は彰が思っている以上に最低な女なんだよ・・・
新しい彼女がいる元彼を奪い返したい、そんな事を考えてる女だから・・・

「いいよ、何でも聞いてあげるから・・・話して?」

私が聞くと、彼は今日あった事を話してくれた。
今日、あの子が他の男と一緒にいたという事を。
連絡が無くて、ずっと心配だったのに、男と仲良く話していて、その現場を目撃してしまって・・・
そして、初めて女の子に手を出してしまった。

でも・・・彰だって・・・
彰だって彼女がいるのに私と一緒にいる。しかもその女は昔付き合っていた女だ。
彼の言ってる事、やってる事は矛盾している。だって彼も似たような事をやっているんだから。
むしろ彼の方が、あの子より最低な事をしている。
口には出さないけど、それも分かってるんだ、彰は・・・
だから余計に辛いんだよね・・・

「オレは・・・もう綾音とはダメかもしれない。
アイツは男とたくさん付き合ってきたし、それも相手は年上ばかりだし・・・
やっぱり、オレみたいな子供はダメで・・・だからまた年上の男と一緒なんだよ・・・」

「・・・・・」

「ずっとオレと付き合ってても、アイツは絶対オレと年上の男と比べて・・・
オレと付き合うのを物足りなく思ってたりしてる・・・」

酷い被害妄想・・・
今の彼を、誰が見てもそう思うだろう。
でも、私は・・・私だけは・・・彰をわかってあげられるから・・・

「彰・・・」

私は彼の手を優しく握る。
そして・・・

「もう、大丈夫だから・・・」

これから私がする事は、本当に最低な事。
でも、これで彰をまた自分のものに出来るかもしれないから・・・

「優?・・ぅんっ!?」

私は彼の唇に、自分の唇をそっと重ねる。
彼は何が起こったか分からないような顔だけど、何も抵抗はしなかった・・・

「なんで・・・?」

「彰、あの子と一緒だと苦しむだけだよ・・・」

「・・・・・」

「あの子の元彼や、その時のあの子にも嫉妬して・・・
あの子を好きになればなるほど、辛い思いしてるじゃん?
それじゃ彰がダメになる・・・」

「そう、かもしれない・・・」

「彰・・・もうあの子と一緒じゃない方が良い。」

「っ・・・」

彰自身、もうあの子とは無理だと分かってるんだ。
でも、それを人に言われて、明らかに動揺している。

「オレは・・・」

「あの子じゃ、彰を幸せに出来ない・・・」

「・・・・・」

「でも、私なら・・・
彰に悲しい思いはさせないから・・・」

彰は私と視線を合わそうとしない。
まだ悩んで、答えが出ないんだ・・・

「正直、自分でもどうしたら良いかわからない・・・
こんな目に合っても、まだあいつを好きだって自分がいる・・・」

「分かるよ・・・」

「でも・・・
もう綾音とは無理で、優が良いっても思う・・・」

「じゃあ・・・」

今度は、彰が私の手を握る。
強く・・・私に何かを求めるように・・・

だから私は、キスで返す・・・
さっきのような唇が触れ合うだけのキスじゃない。
舌と舌を絡ませる大人のキス。

3年ぶりの彰とのディープキスは・・・タバコの味がした。
彼がタバコを吸い始めたのは知ってたけど、タバコってこういう味なんだな・・・
変な味・・・

彰もその気になってきたのか、積極的に私の舌に絡む。
もっとと言うかのように、私は彰の身体を抱き締める。

「オレは・・・やっぱダメな男だな・・・」

「いいじゃん。二人でダメになろうよ・・・」

あの子に対して罪悪感は感じるよ、私も。
でも、止められないから・・・
あの子のためにも、彰のためにも、そして私のためにも・・・
これが一番だと思う・・・そんな自分勝手な考え。

「優・・・」

「いいよ、彰のしたいように・・・
私も・・・だから。」

彰はもう一度キスをし、私のブラウスのボタンをゆっくり外す・・・
今更だけど、大胆だな私って・・・こんな自分もあったんだ・・・

「彰とこういうの、初めてじゃないんだけど・・・なんか緊張するね。」

「そうだね・・・」

ブラウスのボタンが外れ、ブラのホックも外される・・・
自分の裸なんて、彰以外誰にも見せた事ない。
私の初めては彰で・・・彰はそういう女が良いんだ。
私の男性経験んは彰だけだから・・・彰は私の過去に嫉妬する事は無い。
あの子は彰を満たせなかった。彰の話を聞くと、昔は軽い女だったらしいから・・・

「あの時から、胸変わってなくて小さいままだけど・・・」

「全然良いよ・・・」

彰は私の胸に顔をくっつける。
子供が母親の胸を求めるように・・・

「すごいね・・・優の心臓の音。」

「緊張してるって言ったよね・・・あっ。」

彰は私の右の胸を揉みながら・・・いや、揉む程無いから触りながらか。
左の乳首を舐める。こういうの久しぶりだからかな・・・何か感じる・・・

「ん、くっ・・・」

それだけじゃない・・・
あの子と一杯してたんだし、たぶん上手くなってる・・・のかな?

乳首を吸われ、甘噛みされ、手のひらで転がされ・・・
すごく気持ち良い・・・

「っ!ひっ・・!!」

彰はもう一度私の舌に自分の舌を絡ませ、そのまま押し倒す。
押し倒されてからも、胸をたくさん責められて・・・
胸が責められてる間、ももの付け根から股間までの間を優しく撫でられる。
大事な所に触れるかどうかの位置で手は引き返され、そしてまた付け根から股間へと・・・それの繰り返し。
焦らされているのが分かる。もう辛くて、我慢出来なくて・・・だから私は彼の股間に触れる。
彼の股間に触れると、そこは既に大きくなっていて・・・
私も・・・既に濡れているのが分かる。
やっぱり久しぶりだから興奮してるんだ、私・・・

「彰・・・いいよ、入れて欲しい・・・」

「・・・・・」

何度も失敗した彰とのエッチ・・・
私の言葉に、顔を背け返事をしない彼・・・

「気にしないで・・・私は大丈夫だから・・・」

「っ・・・!!」

もう彰はあの子のものじゃない。
私と彰の時間はまた始まるんだから・・・何も焦る事は無いんだよ?

「もう・・・大丈夫だから。
今度は優を・・・頑張るから・・・」

「うん・・・」

「じゃあ・・・入れるよ・・・」

今までとは少し違う彼・・・
また前みたいに彼を傷付けたくない。
今度こそは彰も私も・・・


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