第八話
決着!!受け継がれたその力


「まぐれで当てたくらいで良いきになるなよ、珍獣」

アシュラは口に溜まった血を吐き捨て、
剣を構え直した。

「オマエは何者だ!!
 何でこんな惨い事をする!!」

「オレに一撃をくれた礼に教えてやろう。
 オレはアシュラ・・・
 この世界の王であるガイア様直属四天王の一人である。」

「四天王・・・やはりガイアの手下か!!」

  「これが命令なんだよ。
 貴様等のような下等生物に拒否権は無い!!」

「オマエが・・・オマエらが・・・!!」

デジュンの体から黄色いオーラが噴き出した。

「こいつ・・・珍獣がどうしたのだ!?」

「うおあぁぁぁぁぁぁ!!」

「どうした!!何故動かん!?」

デジュンの気迫に気圧されしたのか、
アシュラは向かってくるデジュンを避ける事が出来なかった。

「だぁぁぁぁぁぁっ!!」

身動き出来ないアシュラにデジュンは無数の乱打を与えた。

「ぶ、ぶるぁぁぁ!!」

「これでぇラストォォォォ!!」

デジュンの渾身の一撃が決まった
と思いきや、やられたのはデジュンだった。

「く・・・、何だあれは・・・!?」

「っくくく・・・ははははは!!」

アシュラの体には無数の触手が生えていた。
それはとても禍々しく、見るものに恐怖を抱かせるものであった。

「貴様のような下等生物にオレの真の姿を見せる事になるとはな・・・」

そう告げるとアシュラの体はみるみる大きくなり、異形の姿に変貌を遂げた。
それに従い無数の触手が醜く動き出す。

「マジすか・・・」

そう呟いた瞬間何かがデジュン目掛けて飛んできた。

「はぶっ!!」

デジュンの体はアシュラの触手に捕まれた。
そしてその触手はどんどんデジュンを締め付ける。

「あぐっ、ぐぐぐぐ・・・」

「ハハハハ、そのまま内臓を口から吐き出させてやるよ!!」

「ぐ・・・ぐそっ!!」

意識が朦朧とし、もうダメかと思った瞬間

ドサッ

「ゲホっゲホっ!!」

「無事かデジュンよ!!」

どうやら切れた触手と一緒に地面に落ちたようだ。

「リアナ!?オマエが助けてくれたのか?」

「・・・お主は早よ逃げるがよい。」

「は?何言ってんのさ!?」

「これはこの村の問題じゃ、お主は関係ない。」

「待てよ!!こいつはこの村の住人を何人も殺してるんだぞ!?
 このまま引き下がる訳にはいかない!!」

「しかし・・・」

「もうオレの目の前で誰かが殺されるのは嫌なんだよ・・・」

「そうか・・・わかった!!」

リアナは決心し、腰にぶら下げてある袋から一つの玉を取り出した。

「儂がスキを作る。お主は奴に力一杯攻撃を撃ち込むのじゃ!!」

「オマエにそんな事が出来るのか?」

「まぁ見ておれ・・・」





「母上、これは?」

ある誕生日、母は私にいくつもの直径3cm程の丸い石をくれた。

「これはね、魔石というのよ。」

「マセキ?」

魔石と呼ばれた石は淡い蒼色をしていて、とても美しかった。

「この魔石には古代より、ゲミル族による魔法が封じ込まれていてね、
 魔法の詠唱が苦手なあなたでも簡単に魔法が使えるのよ。」

「それは便利じゃ!!
 でも何でみんなはこんな便利なものを使わないのじゃ?」

「魔石というのはゲミル族なら、誰でも詠唱を短縮させて魔法が使えるぶん、
 魔力を大量に消費するものなの。普通のゲミル族ならすぐに魔力が尽きてしまうわ。」

「だからみんなは使わないのじゃな。
 でもそれじゃ儂も使えないのでは・・・?」

「あなたは大丈夫。
 あなたはみんなよりも魔力が高いから・・・」

今ならわかる・・・

魔力が高いのは母譲りだからだろう。

そして魔法の詠唱を唱えてもうまく発動しないのは
儂の血にゲミル族以外の血が混じっているからだ・・・

母はわかっていたのだ、儂が魔法をうまく扱えない理由が・・・
だから儂に魔石を託したのだ・・・

だがあのとき、その魔石、母譲りの魔力が原因で儂が暴走したのも事実・・・
もう二度と魔法は使わないと心に決めた・・・

しかし今はそんな事を言っている場合ではない。
儂が魔法を使う事によって、村のみんなが助かるのならば・・・





「属性『風』、レベル『5』、発動!!」

そうリアナが叫ぶと、右手に握られた玉が光だし、
玉から放たれた風の刃がアシュラ目掛け飛んでゆく。

「ま、魔法!?
 オマエ、ゲミル族なのか!?」

「何をしておる!!早よせんか!!」

「あ、ああ、わかった!!」

風の刃がアシュラの体を切り刻み、
青色の血が噴き出す。

「ちぃ!!あの小娘、魔法が使えるのか!!」

「おああああああぁぁぁ!!」

「な!?」

リアナの魔法に気を取られ、
デジュンに気付かなかったアシュラは渾身の一撃を食らう!!

「ぐぶるぁぁぁあ!!」

「今度こそやったか!?」

「いや、まだじゃ!!」

アシュラの傷口から触手が生え始め、
もう触手だらけの悍ましい生物になってしまった。

「貴様等下等生物にィィィ!!ヤラれルワケニハァァァ!!」

「おいおい、こんなんどうしろってぇのよ・・・」

「まだ・・・まだ諦める訳にはいかぬ!!
 属性『火』、レベル『10』発動!!
 属性『水』、レベル『10』発動!!」

リアナの魔法がアシュラに炸裂するが、
ダメージを受けた部分にまたいくつもの触手が生える。

「アアアアアアアアアアアアアァァァ!!」

アシュラの無数の触手が村の建物、残っている村の住人を攻撃する。
触手が触れるだけで建物は粉々に砕け、
触手が締め付けるだけで住人の骨は砕け、内臓が潰れる。

「なんで・・・なんでこんな事をするのじゃ・・・
 儂等や、この村の住人が何をしたというのじゃ・・・」

「くっそ!!
 どうすればいい・・・どうすれば奴に勝てる・・・」

「流星落!!」

突然空からアシュラの脳天向かって、スラップのかかと落としが決まった。

「アグアァグォ!!」

アシュラは凄まじい雄叫びを上げるが
割れた頭からはまた触手が生える。

「スラップキタ━━(゚∀゚)━━!!」

「待たせたな!!パワーアップしたオレ様が帰って来たぜ!!」

「オマエ今まで何やってたのさ!!」

「それはこの化け物倒してから話してやるよ。
 デジュン、リアナ、お前等は下がってろ!!」

「下がってろってオマエ・・・
 そいつは触手でうねうねで、すぐ再生するんだぞ!?」

「言ったろ?パワーアップしたって!!」

この威圧感、ハッタリではなく本当にパワーアップしたんだ、
デジュンはそう体で感じた。

「一撃でカタ付けてやるぜ!!」

スラップは拳に気を溜め始めた。

「デジュン!!
 これが大会のときにオマエに食らわす予定だった
 オレのとっておきの必殺技だ!!」

スラップの凄まじい気を感じたのか、
アシュラの無数の触手がスラップ目掛け飛んでくる。

「行くぜ!!
 無敵流!!牙神突!!」

アシュラに向かって物凄いスピードで向かう。
スラップの拳に触れる触手は跡形もなく消滅し、
それでもスラップのスピードは揺らがない。

「消えろぉぉぉぉぉぉ!!」

アシュラの腹に正拳が決まった。

「キサ、マら、はこレデガイア様ノ敵トミナサレタ・・・!!」

「上等だ、オレ達はそのために戦っている!!」

「クハハハハ・・・セイゼイソノヒまデ悔いのナイよう生きノビルガイイ!!」

そう言い残すとアシュラは触手同様、
跡形もなく文字通り一片の肉片すら残さず消滅した。

「スラップすげぇぇぇ!!
 一体どうしたんだオマエ!?」

デジュンはまじまじとスラップを見たが、
特に変わってる訳でもなく、ただのスラップだった。

「ああ、大地の精霊の力を得たんだよ。
 まさかここまでパワーアップするとはな・・・」

「マジかYO!!
 一体どうやってだ!?
 オレもパワーアップ出来るのか!?」

「後で話してやるよ。
 それより、酷いなこの有様は・・・」

スラップは辺りの死体を見ながら言う。

「ああ、罪もない人を何人も殺しやがって・・・
 ガイアの野郎絶対許せねえよ・・・」

あっ!!と思い出したようにデジュンはリアナの元へ歩み寄る。

「リアナてゲミル族なんだろ?魔法で生き返らすとか出来ないのか?」

「ゲミル族、リアナが・・・?」

「ああ!!すんげぇんだぜ!!
 魔法があればみんなを生き返らす事くらい・・・」

リアナの涙を見た瞬間デジュンは自分の無神経さに気が付き、
自分の発した軽はずみな言葉に悔いた。

「魔法は・・・魔法は完璧じゃないのじゃよ・・・」

「リアナ・・・?」

「ゲミル族なんて、決して優れてる訳ではないのじゃ!!
 魔法が使えるだけで、タダの人間と変わらない!!
 魔法だって何でも出来る便利な物ではないのじゃ!!」

「すまない・・・オレが無神経すぎた・・・」

その言葉を聞いてか否か、

「く・・・う、うう・・・」

「リアナ・・・」

「・・・う、う・・・、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

リアナは泣いた・・・

父の裏切り、母の死、村の崩壊、
決して今まで泣かなかった訳ではない。

それでも泣いた。
泣き続けた。

今までの悲しみを全て吐き出すように・・・