第四話
その業、まさに衝撃


「ふ〜何とか決勝まで上がってこれたなぁ・・・」



デジュンは決勝までなんとか勝ち残り、控室で休憩していた

決勝まで残れたもののデジュンの体にはキズ一つなく

明らかに余裕の勝ち残りだった



「よぉ丸いの」



「お?スラップに負けたおっちゃんじゃん」



デジュンに声を掛けたのは一回戦でスラップに敗れたドルガンだった



「まさかオマエみたいな丸いのが決勝まで来るとは思わなかったよ」



「あんたこそ筋肉マンなのに一回戦で敗れるとは思わなかったよ」



「ふ・・・まぁオマエさんには期待してるんだぜ?

 せっかくここまで来たんだ。あの美形に一発かましてやれよ!!」



力強い握手を交わし、ドルガンは去っていった



「勝ってみせるさ・・・店に借金があるしな!!」












「それではぁ!!決勝戦を始めます!!」



レフリーの挨拶が始まり選手入場が始まる



「よぉ丸いの。オマエなかなか強そうじゃないか」



リングで向かい合ってすぐスラップが喋りかけた



「あんたこそな。伊達に3年連続チャンピオンじゃねえってか?」



「ふ・・・回りが弱すぎたんだよ。オレはオマエみたいな強い奴を待っていた!!」



「楽しめそうだな!!」



「ああ!!」



「おおっと!!既に二人は盛り上がってる様子!!

 さっそくゴングを鳴らしましょう!!」



「行くぞデジュン!!」



ゴングが鳴ってすぐスラップは仕掛けてきた



「正面!!そこか!!」



スラップに向かってと飛び蹴りをかましたが残像だった



「な、残像だと!?」



気付いたときには遅く、スラップは背後にいた



「甘いぜ、丸いの!!」



ドガッ!!

デジュンは空高く蹴り飛ばされ、スラップもそれを追いかけた。



「このままリングアウトで終わらすのは惜しいだろ?」



スラップの空中での乱撃が炸裂した



「どうした丸いの!!オマエはこんなもんな・・・が!!?」



スラップは顔面に一撃を受け地面に急降下する



「まだだ!!くらえロンゲ!!」



デジュンもそれを追い、スラップ目掛け急降下する

スラップはダメージ最小限に着地し、上を見上げた



「いいね!!久々だよ、こんな痛みは!!」



二人の拳がぶつかり合い、リングに衝撃で穴が空いた



「す、すごすぎてとてもリングにいれませ〜ん!!」



レフリーはリングから降り、外から実況を続けた



「やっぱオマエなかなかやるよ・・・」



「オマエも美形のくせに強いな」



「羨ましいのか?ま、悪いけどそろそろ決めといかせてもらうよ。

 オレも何かと忙しい身でね」



「オレもこの試合に勝ち、やらなければいけない事があるんでな」



二人は一斉に構え

スラップは右手にオーラを溜め始めた



「敬意を表してオレのとっておきで仕留めてやるよ!!」



「オレも切り札を使わせてもらうぜぇ!!」



デジュンの体中にオーラがみなぎり、二人の間に緊迫した空気が流れた



「いっくぜーーーーーーっ!!」



「来いや丸いのーーーーーーっ!!」



お互い正面に走り出し、二人がぶつかりあう刹那




ドォォォォォォォン




リングに何かが衝突し、エンファイ会場は跡形もなく崩れた



「な、なにが起きたんだ!?」



瓦礫の山からデジュンが顔を出し、回りを見渡した



「くっそ・・・一体誰だ!!邪魔しやがったのは!!」



スラップは立ち上がり、目の前の砂埃にうっすらと見える二人の人影に向かって叫んだ



「茶番だな・・・」



姿が見え始め、頭にはフードみたいなのを被った黒装束の一人が呟いた

右肩には銀の甲冑をし、表情は伺えないが何ともいえない冷たい雰囲気を漂わせた



「くだらんな、雑魚同士で盛り上がってよ」



逆に左肩に金の甲冑をした男は赤い瞳でスラップとデジュンを見やった



「なんだ貴様らは!!」



デジュンは金の甲冑の男に近いた



「これから死ぬ奴にとっては関係ない事だろ?」



右の手の平をデジュンに向けた瞬間



「がはぁっ!!」



デジュンは何かに吹っ飛ばされ、地面に転がった



「デジュン!!」



スラップはデジュンに駆け寄ろうとしたが

彼もまた金の甲冑の男の不思議な力に吹っ飛ばされた



「く、なんだこれは・・・」



デジュンは立ち上がり、二人を見やった



「まぁ名も知らぬ奴に殺されるのも不憫だな。

 こいつはエイス、オレはオージだ。

 オレは衝撃を操る、貴様らごときではオレに近づく事さえ出来んよ」



「衝撃・・・だと!?」



「そうだ。貴様のようなチンケな格闘ごっことは違うんだよ!!」



 先程よりも激しい赤い突風のような衝撃がスラップを襲う



「ぐ、ぐうっ・・・!!」



「スラップ!!」



「貴様の相手はオレだ・・・」



「!!」



いつのまにか背後に銀の甲冑の男がいたが

蛇に睨まれた蛙のようにデジュンは身動きが取れなかった



(なんだこの冷たすぎる気配は・・・今振り向けば確実に殺される・・・!!)



「大人しくしていれば貴様は殺さない・・・」



「待てぃ!!」



リングの中央に大量の煙が現れた



「こしゃくなマネを!!」



金の甲冑の男は衝撃で煙を吹き飛ばし

煙が晴れたそこには全身白タイツの男が立っていた



「変態ドクターN!!」



「助けに来たぞデジュン、スラップ!!」



「な、なんだあの恥ずかしい格好した奴は・・・」



スラップはドン引きだった



「貴様は・・・」



「何だエイス、知り合いか?」



「いや、何でもない・・・」



「今ここで、こいつらをやらせる訳にはいかんのでね!!」



ドクターNは煙玉を地面に投げ付けた



「させるか!!」



オージは衝撃波で煙を払ったが、そこにはドクターNの姿はなく

デジュン、スラップの姿も消えていた



「やられたな・・・」



「ああ・・・だが奴らの目的は検討が付く・・・」



「なら後はオマエにまかせるぜ?オレには別の用事があるんでな」



「悪巧みか?オージ・・・」



「まぁそんなところだ」



オージはニヤリと笑みを浮かべた



「また何かあったら呼んでくれや」



そういうとオージはどこかへ消えてしまった



「食えん奴だ・・・」



エイスもこの場を去ろうとした瞬間



「ぐ・・・がっ!!」



エイスは口から血を吐き出した



「そうか・・・もう時間がないのだな・・・

 早くしなければ・・・なんとしても奴を・・・」



血を拭い、エイスも瓦礫の会場から姿を消した

エンファイ会場は先程の騒ぎが嘘のように、

初めから誰もいなかったように静かだった・・・