第三話
ザ・エンペラー・オブ・ファイターズ


「はぁ・・・」



選手控室でデジュンがため息をつく



「どうした、あんちゃん?元気がないようだが」



選手の一人だろうか、一人のいかにも強そうなマッチョマンが後ろから話しかけてきた



「いや、なんでもないよ」



後ろを振り向くとあまり人がいない事に気づいた



「なぁ、この大会て結構人気あんだろ?」



「ああ、ここまでデカい格闘大会ていったらこのエンファイしかないぜ」



「の割には選手が少なくねえか?見たところオレ含め8人くらいぽいが・・・」



まわりを見渡しながらデジュンは言ったが男はある選手を見つめている



「奴さ・・・」



「奴?」



「ああ、あそこのベンチに座っている奴だ」



男は、ベンチで寝ている男を指差した。

長く鮮やかな青色の髪しており

まだ10代後半だろうか

あどけなさの残り、女性と見間違うほど美形な男だった



「あいつがどうかしたのか?」



「奴の名はスラップ、15歳から2年間ここのチャンピオンだ」



「15歳でチャンピオンかよ!?それはすげぇな・・・」



「強過ぎるんだよな、だからかこの大会に出場するのはオレみたいな余所者くらいだ」



「あんた、この町の人じゃないんか」



「まぁな、出稼ぎみたいなもんだ

 だが、一番の目的は格闘家として奴と手合わせてみたく出場したんだがな」



「あ〜・・・オレはあんま興味ない世界だな・・・」



一人で燃えてる男のとなりでデジュンは顔をひくつかせながら言った



「あんたは何で出場したんだ?」



「まぁ色々な理由があるんだよ・・・」



とデジュンが言ってすぐアナウンスが流れた



「トーナメント表が決まりましたので選手の方は確認して下さい、繰り返します・・・」



「お、どうやら決まったみたいだぜ。あそこの壁に係が貼ってるのがそうみたいだな」



「オレは楽な選手がいいなぁ・・・」



「!!」



男は表を見て驚きの表情をした



「どうした?ウンコか?」



「いや、一回戦の相手が奴だ・・・」



「ほんとだな、まあやられないよう頑張れよ(笑)」



デジュンの声が聞こえてないのか男は手を握り締め震えていた













「それではぁ!!エンファイ第一回戦を始めます!!」



レフリーがリングの中央でそう言うと会場は一斉に歓声が沸いた



「ホントにデカイ大会なのね・・・」



あまりの観客の多さにさすがのデジュンはビビり気味だった



「赤コーナー!!ドルガン選手のぉ入場です!!」



ドルガンと呼ばれた男はさっきのマッチョマンだった

それなりの歓声を浴び男はリングに上がる



「青コーナー!!3年連続チャンピオン、スラップ選手のぉ入場です!!」



「キャー!!スラップ様ーっ!!」



「こっちをお向きになってー!!」



「キャー!!私に手を振ってくれたわぁ!!」



スラップ選手が入場しリングに上がっても尚、黄色い声援は止まらなかった



「なんすかコレ・・・」



デジュンはドン引きだった



「それではぁ・・・」



レフリーがそういうと黄色い声援は止まった



「エンペラー・オブ・ファイトー!!レディ・・・」



ドルガンとスラップが構える



「ゴォォォォォォォォォォォォ!!」



その掛け声とともに会場は熱狂の渦に巻き込まれる



「スラップ殿、いくぞ!!」



「いいぜ、おっさん!!来い!!」



ドルガンはスラップ目掛け飛び蹴りをかます

だがスラップは余裕の表情で避ける



「どうした、おっさん!!もっと来いよ!!」



「くっ・・・どありゃーーーっ!!」



すごい豪腕パンチのラッシュだが

スラップはすべて避けている



「たいした事ないよアンタ・・・」



スラップはドルガンの腹にパンチを当てる



「がぶぉ・・・!!」



「出直してきな・・・」



スラップが言い終わるとドルガンは吹っ飛んだ

床に倒れ、立ち上がることは不可能なのは誰の目にもあきらかだった



「お見事!!スラップ選手のKO勝ちです!!」



会場は更にすごい歓声が沸いた



「さすがチャンピオンだな・・・あのパンチ、一発に見えて三発も繰り出すとは・・・」



どこかで聞いたような台詞をデジュンは吐く

こう見えてもデジュンは長い間狩りで猛獣と戦っていたため

それなりに強い・・・かもしれない













「それでは第四回戦です!!赤コーナー、デジュン選手のぉ入場です!!」



「よっしゃ!!いっちょやるか!!」



控室からデジュンが出てくる



「3位まで賞金出るから何とか頑張れ〜」



歓声の中から宿屋の親父の声が聞こえた



「ふっ、目指すのは優勝だぜ!!」



そう呟いた刹那、後ろから声が聞こえた



「調子に乗るなダスよ」



「!!」



振り向いた先には何とも不気味なグリグリ眼鏡の学ラン男がいた



「おおっと!!ベンゾウ選手、いつのまにかリングに上がっていたぁ!!」



「優勝するのはオマエでもスラップでもない、ワシだす!!

 優勝してユキさんに振り向いてもらうダスよ!!」



「女目当てのオマエなんかに負けるかよ!!」



「一触即発な雰囲気なので始めます!!レディ・・・、ファイッ!!」



試合開始の合図とともにベンゾウがデジュンに襲い掛かる



「ユキさーん、今イクだすよー!!」



ベンゾウは上着のポケットからペンを取り出し、デジュンに投げた



「うおぅ危ねっ!!飛び道具ありなんかよ!!」



「まだまだイクだすよー!!ユキさーん!!」



ベンゾウは定規、消しゴム、エロ本、色んな物を投げてきた



「さすが学生だな、色んな物持ってやがる!!」



「なっ!?全部避けたダス!?」



デジュンは一瞬でベンゾウの懐に潜り込んだ



「悪いな、オレも優勝しなきゃいかん訳があるんでな!!」



ドゴッ

ベンゾウのみぞおちからニブい音が鳴った



「くぁwせdrftgyふじこl・・・」



ベンゾウはその場で崩れ落ち、観客は沈黙になった



「お、おおっとー!!なんと丸い生物、デジュン選手一発KO勝利です!!」



一気に歓声が沸き上がり、それはスラップの勝利と同等、それ以上かもしれない

デジュンはガッツポーズを取り、リングの外にいるスラップを見た



「あいつ、丸いくせにオレと同じ三発繰り出しやがった・・・

 ふっ・・・今回はなかなか楽しめそうじゃねえか!!」



















「奴らがそうか・・・?」



「みたいだな」



黒装束をまとった二人は会場から離れた場所でリングを眺めていた