第二十一話
それぞれの想い


「お、デジュンが戻って来たぜ。」

スラップの指差す先にはデジュンがいた。

「何か様子がおかしいのぅ・・・」

「確かにあの野郎、ガラにもなく暗いな。」

「・・・・・」

三人はデジュンに駆け寄った。

「お主、精霊から何かを聞き出したのじゃな?」

「ああ・・・」

いつもと違うデジュンに三人は戸惑ったが、今は話している時間はない。
耐熱魔法の時間も残り僅かであるため、早くここから抜け出さなければいけいからだ。

「まずはブリリード山から出る、それからにしようぜ話はよ。」

「スラップの言う通りじゃ。デジュンもそれでよいな?」

「ああ、すまない・・・」

「・・・・デジュン」

「何だ・・・?」

「これから始まる戦い、オレ達は負ける訳にはいかない。
迷うな、その迷いが命取りになるぞ・・・」

「そうだな・・・ありがとなソール。」

四人はブリリード山を後にした。





『特殊な力を持たず、ただの人でありながら最強の肉体を持つ者』

『ゲミル族と人間との混血であり、ゲミル族以上の魔力を持つ者』

『"扉"に触れずに刻印を手に入れた者』

『そして、イレギュラーであるオリジネイターの者・・・』

「は・・・四人の、最後の覚醒は先程終了した模様です。
次はこのガイア城に攻めてくるでしょう。」

自室にてシャナは腕輪から発せられる四人の声を会話していた。

『とんだ曲者揃いだな。』

『やはり一番の謎はオリジネイターの存在だろう。
何故あやつがこの世界に存在しているのか。』

『理由は察しがつく。ただ確証が無いだけだ。』

『本当の意味での覚醒をしない限り、現段階ではオリジネイターは脅威ではない。
今は我々の計画を進めるのが先だ。まずは奴等を利用し、あの力を手に入れる。』

「了解しました。では当初の予定通りに・・・」

『そのためのオマエとオージだ。
全ては神の世界へのために・・・』

そこで腕輪からの通信は途絶える。
その通信が終わったのと同時に、オージはシャナの部屋へ入って来た。

「年寄りどもの話は終わったか?」

「オージ様・・・」

「まったく、この城に閉じ込められてから暇でな。」

「仕方ありません、デジュン達はもうすぐここへ攻めて来るでしょうし・・・」

「次の戦いはオレ達もやらされる。
オレが用意した人形もやっと役に立つ訳だ。
もちろんオマエにも戦ってもらう。」

「は・・・」

「ふ、オマエの部屋に来たついでだ・・・
エイスのようにオレの相手もしてもらおうか?」

「命令とあらば・・・」

「冗談だ・・・戦いは近い、体を慣らしておけよ?」

「了解しました・・・」

オージは部屋を出る。

(もうすぐ私達の計画が始まる・・・
私はそれでいいの・・・?エイス様・・・)





「そうか・・・そんなことがのう・・・」

四人はブリリード山を降り、体を休めるために街を探している所であった。
そして四人は街を探しつつ、これからのことを話し合った。

「オレ達が戦う相手・・・それはガイアではなく、
エイス、オージ、そしてクリーチャーであるデスミオスて事か。」

「ああ・・・オレの仇はガイアなんかじゃなかった・・・」

「そんなにウジウジすんなよ・・・
確かにオマエの仇はガイアではなく、デスミオスだった。
でもな、精霊の話だとガイアが暴走したのにも訳がありそうだぜ?
ガイアを暴走させたのはエイスやオージの可能性が高い。」

「ふむ・・・その後、勇者に封印されたガイアを復活させたのじゃろうか。」

「確証はないがその可能性は高いな。
奴等はオレ達四人と精霊の力が揃うのを阻止しようとした所を見ると、
そこにもまだ秘密がありそうだな。」

「奴等がオレにオマエ等の抹殺を依頼したのは、
勇者の生まれ変わりを共倒れにさせるためだったのだな。」

「・・・・・」

「そんなクヨクヨすんなよデジュン!!
仇じゃないからといって、このまま奴等を放っておけないだろ。」

「オレ達は無力じゃない・・・オマエが言った言葉だ。
無力じゃないのならこの力、この世界のために役立てるべきだろう・・・」

「デジュン・・・
儂等がこれからすべき事は、ガイアを正常に機能させ、デスミオスからこの星を守る。
そして今後この星に住む者達を、儂等のような目に遭わせない・・・じゃろう?」

「そうだな、確かにみんなの言うとおりだ・・・」

精霊と別れてからずっと暗かったデジュンの表情が、いつもの明るい表情に戻った。

「よっしゃ!!
さっさと体を休めて、エイスとオージを倒す!!
そして必ずこの星を守る!!」

「その一直線馬鹿、それこそがデジュンだな。」

「うむ、落ち込むのはデジュンらしくないのう。」

「馬鹿でこそだ・・・」

「テメェ等!!みんなしてオレをバカ呼ばわりかよ!?」

四人の決意が固まったときだった。
四人は突然の雨に振られてしまったのだ。

「ちっくしょぉ!!戦いが終わってこんなんかよ!!」

「つべこべ言わず走れデジュン!!」

「む!!あそこに洞穴がある!!
あそこで雨宿りするぞよ!!」

雨宿りが出来そうな洞穴を見つけると、四人はすぐさま洞穴に入る。

「ふぅ、服がびしょびしょで風邪引きそうだ・・・」

「オマエは服なんか来てないだろ・・・
ったく、魔法で回復してもらったとはいえ完治じゃないもんで走るのは辛いぜ。」

「・・・ここで雨が止むまで待つか。」

「そうじゃのう。丁度そこに木の廃材がある。
これに火を付けてはどうじゃ?」

「そだな、このままじゃ風邪引くし服を乾かすか。まかせとけ!!」

「儂は奥で乾かすので、向こうにも火を頼むぞよ。」

「おう、男連中はここで乾かしてるよ。
まずはこっちから・・・出ろ、オレの炎ぉぉぉぉ!!」

デジュンが叫ぶと、デジュンの右手の平に炎が燃え上がる。
そしてその炎を廃材に移させる。

「よっしゃ、次は奥だ!!
燃えろ、オレの炎ぉぉぉぉ!!」

デジュンは奥へ行き、先程と同様に廃材に火を点ける。

「お主、いちいち叫ばなければ炎が出せぬのか・・・?」

「いやいや、気分の問題てぇか・・・
やっぱ技出すときの掛け声て大切だと思うよ?」

「まぁお主がいいのならいいが・・・
では服を乾かす故、覗かぬようにな。」

「わかったわかった。スラップとソールにもちゃんと言っておくよ。」

デジュンは最初に火を点けた場所に戻り、火の傍に座る。
見ると、ソールは脱いだ服を火の傍で乾かしているが、
スラップは服を着たまま座り込んいる。

「ん?濡れた服、脱がないのか?」

「いいよオレは。このままでも。」

「濡れた服着たまんまだと風邪引くぞ?
てか恥ずかしいとか?男同士なのに?」

「そんなんじゃねぇよ。」

「何を今更・・・なぁソール?」

「・・・・・」

「ソールだけじゃ不公平だよなぁ」

デジュンはニヤニヤしながらスラップに近づく。

「な、なんだよ・・・」

「いやいや、大事な仲間が風邪を引いちゃ困るしな。」

「だからなんだよ・・!!その手は!?」

「行くぞソール!!オレを援護しろ!!」

「・・・任務了解」

デジュンとソールはスラップの服を脱がせるべく襲い掛かる。

「やめろぉぉぉぉ!!」

スラップは必死に抵抗するが、服は半分ほど脱がされかけていた。
そのときだった。

「ん?なんだこれ」

ふに・・・

「・・・む」

ふにふに・・・

二人はスラップの胸から奇妙な感触を感じた。

「なぁ、これって・・・まさか」

ふにふにふに・・・

「む、むね・・・」

ブシューーーーーーッ!!

「お、おいソール!?」

ソールは大量の鼻血を噴出し、その場に倒れこんでしまった。

「意外に純な奴なのかソールは・・・」

「おい・・・」

後方より殺気・・・
殺られる!?

「テメェも血を噴出せやぁぁぁぁぁ!!」

オレは一体何発喰らったんだろう・・・
気が付いたとき、オレは血だらけの状態で倒れていた。

「一体何の騒ぎじゃ・・・?」

騒ぎを聞きつけて、下着の状態のリアナが覗きに来る。
そしてそれを見たソールは・・・

「ぐはぁぁぁ!!」

ブシューーーーーーッ!!

「下着姿で鼻血とは・・・儂もなかなかの美貌じゃのう。」

「・・・・」

「スラップ?お主も儂に見惚れたか?」

言ってみたが、とてもそんな空気ではなかった。
よく見てみると、スラップの胸が・・・

「お主・・・女じゃったのか・・・?」

「・・・・・・」

普段はサラシで巻いていたのだろう。
ほどけたサラシの隙間から小振りな胸が見える。

「何故今まで黙っておった?」

リアナの問いにスラップは長い沈黙の後、

「オレは既に女を捨てたからだ・・・」

そう、この場にいる四人は皆、何かしらの戦う理由がある。
それはスラップも同様、暗い過去を持っていたのだ。

「オレは女を捨て、奴等に復讐をすると決意した・・・
オレが戦う理由はオマエ達と同じさ・・・」

デジュンは起き上がり、

「オレ達は仲間だ。
聞かせてくれ、オマエのことを・・・」

スラップはゆっくり頷き、静かに語り初める・・・