第十六話
再会、そして決闘


それは誰の記憶なのか・・・
それは決して有り得ない記憶・・・

だが深いまどろみの中で確かに垣間見た・・・

もう一人のオレの姿を・・・


「いっくぜぁぁぁぁ!!」

「ワシは負けん!!負けはせぬぞぉぉぉぉ!!」

「これで終わりだ!!ガイアァァァァァァァァ!!」

二体の丸い生物は互いに激しくぶつかり合った。
そして激しい爆発音と共に映像はプツっと途絶え、また別の映像が流れる・・・



「このファルスティアを守るため・・・ガイア、貴様を倒す!!
 精霊よ、私に力を!!この世界を守る力を!!」

それは先程見た記憶と同じような光景・・・
だが今見ている記憶は、お互い先程の記憶とは違う人物であった。

ガイアと呼ばれたそれは、壁に埋もれた巨大な女性だろうか、顔であった。
そしてそれに立ち向かうは、肩まである美しい銀髪の男であった。

『我はこの星の守護神・・・
 我が滅せればこの世界は滅ぼされるであろう・・・
 精霊に選ばれし者よ、それでも主は我を討つと申すか・・・?』

「黙れ!!そんな虚言を信じられると思うか!!
 貴様を倒し、クリーチャーを止め、私はこの世界の平和を取り戻す!!」

ヘイワ・・・ソレハニンゲンヲショウキョスルコト
ヒトガヒトデアルカギリ、カナシミノレンサハエイエンニツヅク・・・
ソレハトオイミライデモオナジデアリ、ソレハファルスティアノハメツヲイミスル・・・

ダカラワタシハ・・・


それはその記憶に混じって何者かの声が聞こえた。
とても気味の悪い、聞くだけで寒気を感じる声だ。


これは一体何なんだ・・・?
初めの映像でオレが戦っている相手は・・・ガイア?

なら二つめのこの映像は誰だ?

こんな記憶、知らない・・・
オレは知らない!!

一体何なんだよこれは・・・
オレが一体どうしたってんだ・・・!!





「デジュン!!いつまで寝てやがんだ!!
 いいかげん起きろ!!」

「ん、んん・・・」

いつもの聞き慣れた怒声、
スラップか・・・?

「おら!!嬢ちゃんがテメェを待ってんだろが!!」

そう言いスラップはデジュンが被っている布団を剥ぎ取る。
それに巻き込まれデジュンはベッドから転げ落ちた。

「あう!!」

「よし起きたな。
 おばさんが朝飯作ってくれたんだぜ?
 冷めないうちに早く来いよ!!」

「おぉ、わかった・・・」

目覚めたばかりにも関わらずデジュンは意識がハッキリしていた。
原因は分かっている。あの夢だ。

夢?いや、夢じゃない。
あれは確かにオレが持っている記憶、
だが有り得ない記憶、身に覚えのない記憶・・・

「何か、オレにあるってのか・・・?」

考えてもまったく答えが出ないことは初めから分かっている。
だがどうしても何かが引っかかる・・・
何か・・・大事な事を忘れてる?

「お兄ちゃん、ご飯食べないの・・・?」

「あ、ああ、ごめんな。
 すぐ行くから待っててくれ〜。」

今は考えても仕方ないか・・・
この戦いの先に答えが見つかるかもしれない、
今はそう考え行動しよう・・・





「ソール殿、これを使いなされ。」

ブリリード山へ向かう途中、ソールは怪しげな首飾りを受け取った。

「・・・何だ、これは?」

「ブリリード山はマグマによってとてつもない熱気です。
 常人ではとても耐えられるものではありません。
 そのための首飾りです。」

周りにいるイーフェイルの手下を見ると
皆同じ首飾りをしている。

「・・・気が向けばな。」

「わかりました、それでは先を急ぎますぞ。」

「ああ・・・」

(デジュンとか言ったな。
 その二人の仲間もそうだ、奴等とオレの中の精霊の力の共鳴・・・
 あのとき精霊に言われた言葉、仲間を探せと・・・
 それが『神の世界へと続く扉』を見つける鍵になるとも・・・)

「どうなされましたソール殿?」

「何でもない・・・」

(だがこれでいいのか?
 オレは一体何をしたい?
 精霊の力を全て得るため?
 『神の世界へと続く扉』を見つけるため?
 刻印がオレを選んだ理由を知るため?)

(全ては奴等と再び対峙したとき明らかになるのか・・・?
 そのときオレは・・・)





「どうですかな、サイズが大きい、小さいはないですかな?」

「ああ、武器防具供にピッタリだ。
 それにこのオープンフィンガーグローブ、
 これはかなり気に入ったぜ!!」

「そのグローブには軽くて硬い特殊な金属が埋め込まれてまして、
 今までの素手での格闘よりかなり有利になると思いますよ。」

「確かにとても金属が入ってるとは思えない程軽いな・・・
 おっちゃん、ほんとにサンキュー!!」

そう言いスラップは拳の素振りを始める。

「う・・・む・・・」

「どうしたリアナ?
 サイズが・・・でかいのか?」

「全体としてはピッタリなのじゃが・・・
 その・・・胸が・・・のぅ・・・」

どうやらダイスが用意した法衣の胸のサイズが合ってないらしく、
胸の辺りがぶかぶかのようである。

「す、すみません!!
 サイズ間違えてましたか!?」

「・・・いや、儂が見栄張って
 胸のサイズをサバ読みしてました・・・
 じゃが、ぶかぶかも悪くはない、儂はこれで良いぞよ。」

「それでしたら良いのですが・・・
 ちなみにその腕輪にも秘密がありましてな。」

リアナは自分の右手に付けてある腕輪を見た。

「その腕輪の窪みにリアナさんが所持している魔石をセットすると、
 普段の1.5倍程の力を発揮するんですよ。」

ダイスは自慢げに腕輪の説明を続ける。

「更にこれがメインなんですが、
 これを使用すれば詠唱魔法と同時に、魔石の魔法を使えます。
 更に更に!!
 その方法を用いれば二つの魔法を混ぜ合わせる事も出来、その力は未知数です!!
 今までそれを行って来たのは大魔法使いのカレン様だけと言われています。」

「母上が・・・
 儂の魔法と、母上の魔石・・・」

リアナは魔石が入った袋を抱きしめ、

「今一度、母上の力を貸して頂きます・・・
 ダイス殿、ほんとに感謝致します・・・」

二人がダイスの武器防具でパワーアップしている中、
一匹置いてけぼりな生物がいた。

「おい、盛り上がっているのは良いけどよ。
 オレのは・・・?」

「オマエのはないぞ。何を今更(笑)」

「いやいや、普通主人公のオレもパワーアップしなきゃおかしくね?
 大体オレだけ未だに精霊でパワーアップもしてないんだし」

「まぁお主がそう言うのももっともなのじゃが、
 お主に合う武器や防具となるとのう・・・」

「自分の体系見て言えよ。
 オマエに合うモノなんてないだろ。」

リアナはあくまで静かに告げようとしたが、
スラップは横からハッキリと言ってしまった。

「Σr(‘Д‘n)」

「いやいや、お主今更驚かれても・・・」

「時間があればデジュンさんのは新しく作れたのですが・・・
 いえ、時間と"原魔石"さえあれば・・・」

ダイスは申し訳なさそうにそう呟く。

「原魔石・・・
 確か魔石は、ゲミル族が原魔石に魔法を封じ込めた物。
 つまり魔石の元じゃな。」

「ええ。元々原魔石はとてつもない魔力を秘めており、
 その力を用いて誰でも魔法を使えるよう作られたのが魔石です。
 もっとも、原魔石の魔力の扱いが難しかったため、結局使用者の魔力が必要になり、
 魔法詠唱を短縮出来るだけという代物になりましたがね。」

「その原魔石とデジュンの武器が関係あるのか?」

「原魔石は本来、武器や防具に使われる石なんです。
 原魔石を使用したアイテムの事を”魔道具”といい、
 その力はとても凄まじく、あなた達の役に必ず立つのですが・・・
 この時代、原魔石がなかなか発掘されなくてね・・・」

「無いものをグチグチ言っても仕方ないさ。
 いいぜ、オレはこのままでよ。」

「せめてデジュンさんにはこれを・・・」

そう言いウェンは傷薬、そして炸裂弾を3つデジュンに渡した。

「その炸裂弾はかなり強力なので、使用時には50m程離れて使用して下さいね?」

「50m離れるて・・・
 本当にかなり強力なのじゃな・・・」

「本当に色々サンキューな!!大切に使わせてもらうぜ!!」

デジュンはウェンとダイスに礼を言い、
その二人の後ろにいるラキに近づく。

「ラキ、またな。
 落ち着いたら必ず来るからさ、そんな悲しい顔すんなよ。」

今でも泣きそうなラキの頭に手を乗せ、優しく撫でてやる。

「絶対約束だよ?
 ホントにホントに絶対だよ・・・?」

「ああ、オレを信じろ!!
 このデジュンをな!!」

ラキは流れそうな涙を堪え、満面の笑みで・・・

「うん!!」

「それでは儂等はもう行きます。
 本当に色々お世話になったのじゃ。」

「このグローブ大切にするぜ!!
 オレ等の勝利を祈っててくれよ!!」

「おっちゃんも、おばちゃんも、ラキも・・・
 またな〜〜〜!!」

そして三人は旅立った・・・

「本当に不思議な方達だ・・・」

「そうね・・・
 本当にクリーチャーに怯える毎日から解放してくれそう・・・」

「お兄ちゃん、気を付けて・・・」





「見えたぞよ。
 あれがブリリード山じゃ。」

「あれか・・・
 確かに熱気が伝わってくるな。」

「ここにオレの精霊が・・・
 よしリアナ、耐熱魔法を頼む。」

「了解じゃ。
 但し持続時間は2時間、そしてあくまで熱を和らげるだけであり、
 マグマに落ちたりしたならば耐熱魔法を受けてても即死じゃからな?」

「わかったぜ。
 ようはマグマに落ちなきゃいいんだろ。」

「それでは二人とも、そこに並んでくれ。」

言うとおり、デジュンとスラップはリアナの前に並んだ。

「では・・・」

リアナは少し長めの詠唱を始める。
そして詠唱が終わると同時に、水のようなものが三人の体を包み、消えた。

「これでOKじゃ。」

「よっしゃ!!
 これで準備万端だぜ!!」

「持続時間は2時間・・・
 いつガイアの手下が現れるかわからない、
 デジュン、リアナ、急ぐぞ。」

耐熱魔法の時間は2時間、そしてもしその2時間過ぎたとしても、
耐熱魔法はあと一人分しか使えない以上、三人は急ぐしかなかった。

「どうだデジュン?
 精霊との共鳴はあるか?」

「う〜ん・・・
 なんか体がピリピリはするんだが、
 まだ近くにはいないみたいだ・・・」

「お主の共鳴だけが頼りなのじゃ、頼むぞよ。」

「ああ、なんとか頑張ってみ・・・!!」

そのときデジュン、スラップ、リアナの三人は何かを感じ取った。

「これ・・・が精霊の共鳴・・・?」

「いや違う、精霊が近くにいるからオマエも感じるんだろ。
 これはもう一人の勇者との共鳴だ。」

「勇者!?
 まさかこの近くにいるのか!?」

「もう一人の勇者・・・
 確かソールと言ったか、奴がいるぞよ!!」

「は!?
 ソールが勇者だって?」

その時だった、見覚えのある巨大な剣を持った男が上空から降って来たのだ。
そしてソールに続いて見慣れない男達が何人も降って来る。

「また・・・会ったな。
 今回はあの娘もいない、今度こそ・・・殺す!!」

ソールはその巨大な剣をデジュン達に突きつけ、
自分は既に攻撃の意思ありという事を示す。

「ソール殿、助太刀致します!!」

「イーフェイル、手を出すな・・・
 こいつ等はオレがやる・・・」

そうソールに言われたイーフェイルと呼ばれた男は
他の兵士達にも手を出さぬよう指示した。

「あくまで私達の目的はデジュン達の抹殺、
 少しでも不利になるようならば手を出させて頂きますぞ。」

「ああ・・・」

「スラップ、リアナ。
 さっきの話がたとえ本当だろうとも!!」

デジュンは構え、

「オレはあのときの仕返しをしなきゃ気が済まねぇ!!」

「いや、ちょっと待てよデジュン!!」

「気が済むまでやらせようスラップ。
 どのみちソールもこちらの話には応じる気は無いようだしのう・・・」

「ち・・・
 二人が疲れ果てた頃に説得するしか無いってかよ・・・」

「いくぞぁぁぁぁ、ソール=ゲイン!!」

「来い、デジュン・・・!!」

デジュンの拳、ソールの大剣が激しくぶつかり合った・・・