第十五話
少女ラキの恋?モテモテなデジュン


「来たか・・・」

ガイアがいると思われる大広間にオージとシャナ、ソールが現れた。

「エイス、久しぶりだな。
 シャナから事情は聞いたが何か大変な事になっているみたいだな?」

(白々しい男め・・・
 私が何も知らないとでも思っているのか・・・?)

そうエイスは口に出しかけたが、
今そんな事をしては今までの監視が無駄になる。

それはオージも同様、お互いがお互いを監視するという関係上余計な言動は無用だ。
刻が訪れるまでエイスもオージも事を起こさないだろう。

「ああ、デジュン一行は既に四天王の二人を倒した。
 もう一人はデジュン以外の奴等に倒されたみたいだがな・・・
 そしてデジュン達は明日の朝、火の精霊がいると思われるブリリード山に向かう。
 ブリリード山の次はいよいよこのガイア城に攻めてくるだろう。」

「ほう、あの下らん大会からかなり成長したようだな。
 それで、オレはどうすればいいんだ?
 呼んだからにはオレに何か用があるのだろう?」

「明朝イーフェイルをブリリード山に向かわせ、デジュン達の目的を阻止する。
 オマエにはその間、この城の護りを任せたい。」

エイスの後ろからイーフェイルが姿を現す。

(なるほど、影とはいえ四天王の最後を向かわせ、オレを自分の目の見えるとこに置くか・・・
 これはかなり焦っていると見るか、それとも・・・
 だがオレとしてもソールの覚醒という任務を終わらせた以上、
 後はこいつの監視でも構わんのだが、上がそれで納得するかどうか・・・)

オージはシャナを見、シャナは頷きで返す

(年寄り供はお見通しということか・・・
 だが、ここからはオレのオリジナルでやらせてもらうぜ?)

「ああ、了解だ。
 だが話を聞いたところ、デジュン達はかなり腕を上げている。
 そいつ一人では心許ないだろ?」

その言葉を聞いてか一瞬イーフェイルの眉間にシワが寄った。
だがそんな事を気にせずオージは続ける。

「そのためにオレは今まで役に立ちそうな奴を連れてきてやったのよ。
 紹介する。こいつの名はソール、かなり腕が立つぜ?」

エイスはソールの目を見つめる。
何か不思議な違和感を感じて、無意識の内に言葉を発してしまう。

「その・・・目は・・・?」

「オレの目がどうかしたか・・・?」

「いや、何でもない・・・
 いいだろう、イーフェイル、オマエはソールと供にブリリード山に向かうのだ。」

「了解しました。
 ではソール殿、明日の準備のためこちらの部屋に来て頂けますかな?」

「了解だ・・・」

ソールはイーフェイルと供に別の部屋に行き、
この大広間は残された三人だけになった。

(あの感覚は"超越者"・・・?
 だが奴の目に刻印は刻まれていなかった。
 オージめ、一体何を企んでいる・・・)

「さて、オレは疲れているんだが、
 とりあえず休ませてもらっていいか?」

「ああ、構わん。」

「それじゃしばらく休ませてもらうよ。
 それと・・・シャナが寂しがっているぞ?
 ゆっくり出来るときはシャナの相手をしてやれよ。」

何がそんな可笑しいのか、ニヤニヤしながら
そう言い残しオージもまた大広間を後にした。

「エイス様・・・」

「シャナ、奴は一体何を考えている?
 奴が連れてきた男、ソールとやらは何者だ?」

「いえ、私は何も・・・
 腕の立つ者としか・・・」

「・・・そうか。
 まぁいい、オマエも疲れているのだろう?
 デスミオス供が攻めて来たときにはオマエにも手伝ってもらう。
 そのためにも今は体を休めろ。」

「わかりました・・・それでは・・・
 あ、エイス様・・・」

「・・・なんだ?」

「いえ、何でもありません・・・」

「・・・・・・」

シャナが部屋を出るのを確かめてか、
エイスの目の前に一人の部下が現れる。

「どうした・・・?」

「先程のソールという男、
 奴は先日のヴァファム様の件の三人組の一人です。」

「なるほど・・・そういうことか。
 後でイーフェイルに伝えろ、
 ブリリード山にてデジュンと供にソールも抹殺せよと!!
 そしてこの任務内容はオージ、シャナには漏れぬよう重々気を付けろ!!」

「はっ!!
 ・・・ですが今始末しなくてよろしいのでしょうか?」

「オージがいる以上この城内で始末するのは得策ではない。
 今はオージだけでなく上の連中までもが動かれると面倒だろうしな・・・
 だがブリリード山であればいくらでも始末するのは容易いだろう。」

「そういう事ですか、納得しました。
 まだ奴等には利用価値がありますからね・・・」

「そういう事だ・・・
 ふっ、オージ・・・いや上の連中の目的が少しづつ見えてきたな・・・
 そう何でも自分達の思い通りにうまくいくと思うなよ・・・!!」

エイスはガイアがいると思われるカーテンの前に立ち、

「"ベーレイニガン"・・・
 こいつさえ完成すれば後は上の連中といえど脆いものだ。
 それまでの間何としても精霊と勇者達を揃わせる訳にはさせん・・・」





「まったく何だったんだよ、あいつぁ!!
 今度会ったら絶対何倍にもして返してやんぜ!!」

「それよりお主、まずは命の恩人に感謝せねばいかぬだろうに。」

リアナが目配せし、デジュンはあのときユビナメ村で助けた女の子の視線に気付いた。

「あ、ああ。
 今回はオレが助けられちゃったなぁ、ありがとよ。」

「丸いお兄ちゃん、どこも怪我はないの・・・?」

これはもしや少女とのフラグが立った?
とスラップとリアナは感じたそうな・・・

「ああ大丈夫だぜ!!
 それよりキミがなんで?」

「村があんなことになってからね、
 ここの街に住む事になったの・・・」

「そうか・・・
 ここの街は結構大きいし、住むにはいい所かもしれないな。」

「お兄ちゃん達はまたどこか行っちゃうの・・・?」

少女はうるうるした瞳でデジュンをみつめる。

(おいおい、あの子本気でデジュンを・・・?)

(まぁ趣味は人それぞれだからのぅ。
 若さゆえの過ちということで・・・)

「ああ、お兄ちゃん達は悪い人達を倒すため、
 明日にはこの街を出るんだ。」

「そうなんだ・・・」

少女がそう落ち込んだとき、デジュン達の前にその子の両親が現れた。

「おや、あなた達はいつぞやの・・・」

「あ、どうもなのじゃ。
 娘さんから聞きましたが、この街に住むそうで・・・」

「ええ、これだけ大きい街ですから住む家はすぐ見つかりました。
 前の村の生活とは違いが大きいのでなかなか馴染めませんが・・・」

そう言いながらも少女の父と母は笑いながら話を続けた。

「それより、急ぎでないのでしたら私達の家でお茶でもどうですか?
 命を救って頂いたお礼もしたいと思っていましたので。」

突然の少女の父親の発言に驚いたが、デジュン達は顔を見合わせ、
ここはお言葉に甘えよう(うまく行けば今夜の宿代が浮くかも)と考えた。

「お邪魔でなければ・・・
 ですが我々は今日の宿を探さなければいけないので、
 そんなにゆっくりは出来ませんが・・・」

(うまいぞよスラップ!!
 さりげなく宿の当てが無いことを言うとは!!)

「それでしたら是非家に泊まって下さい。
 娘のラキも喜びます。な、ラキ?」

「うん!!」

(キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!! さすがスラップだぜ!!)

(これで今日の宿は安心じゃのぅ)

「ささ、それではこちらへ。」

デジュン一行はそうラキの父親に誘われ、家に泊まる事になった。





「お邪魔しま〜す!!」

ラキ親子宅へ最初に足を踏み入れたのはデジュンだった。

「それじゃあなた、私は晩御飯の仕度をしますわ。」

「ああ、今日はデジュンさん達がいるんだ。
 ごちそうを頼むぞ。」

(ふぅむ、ごちそうも出して頂けるとは・・・
 これはなかなかお得じゃのう・・・)

(オレのおかげだぜ、感謝しろよ?)

(儂等て意地汚いのぅ・・・)

「ねぇねぇお兄ちゃん。
 この絵本読んで欲しいの。」

「おお、いいぜ!!
 なんたってオレは絵本読みの天才と、ととと」

絵本を持ったラキはデジュンの手を引っ張り、
こっちこっちと自分の部屋に招き入れる。

「ははは、あなた達が来たおかげでラキもあんなにはしゃいでます。
 今日は本当にありがとうございました。」

「いえいえ、お礼を言うのはこっちですよ。
 こちらこそありがとうございました。」

「晩御飯までまだ時間が掛かりますので、
 それまであなた達の事についてお話を聞かせて下さいませんか?」

「儂等の事について・・・ですか?」

「自己紹介が遅れましたね。
 私の名はダイス、これでも一応武器を作ったりして生計を立ててます。」

「はぁ」

「ちなみに妻のウェンは薬師をやってましてね、
 これがまたよく効くんですよ。」

「あの、話がよく見えないのじゃが・・・」

「いえね、あなた達のために武器、防具をプレゼントしたいと思ってるんですよ。
 明日の朝ここを発つという事なので今から新しいのを作る事は出来ませんが、
 在庫の中からでしたら、あなた達に合う物をすぐ用意出来ますので・・・
 そのためにあなた達の戦闘スタイル、サイズを教えて頂きたい。」

「さすがにそこまでして頂く訳には・・・」

泊めてもらい、ごちそうしてもらう身でありながらも
さすがにそこまでは悪いと思うスラップとリアナであった。

「いえいえ、是非用意させて下さい!!
 命を助けて頂いたんです、これでも安いくらいですよ!!」

ここまで言われたからには断る訳にはいかないだろう、とスラップは考え、

「わかりました、お言葉に甘えさせて頂きます・・・」

スラップ達は自分達のスタイル、サイズを教え、
武器と防具は明日の出発までに用意してもらう事になった。

そしてダイスとの話が終わった頃、
母のウェンが現れ、晩御飯の準備が出来た事を知らせる。



「いやぁこんな大人数での食事だと楽しいですなぁ」

「そうね、どうせなら明日出発と言わず
 もう少しゆっくりしていけばいいのに・・・」

「ははは、でもオレ達てば世界の平和を守るために戦ってるんだぜ〜。
 平和になったらまた寄らしてもらうよ!!おばさんのメシもうまいしな!!」

「お兄ちゃん達、また来てくれるの?
 いつ?いつ?」

「え〜っと・・・
 まぁ近いうちだよ、近いうち!!」

「絶対だよ?絶対ちゃんとラキのとこに来てね?」

「ああ、約束だ!!
 ちゃんと迎えに来るから待っててな!!」

(何、この空気・・・?)

(迎えにって、デジュンはちゃんとあの子の気持ちを
 分かってての台詞なのかのぅ・・・)

「まったくラキはずいぶん丸いお兄ちゃんが好きなんだなぁ。」

「あっははははは!!
 いや〜モテモテはつらいなぁ、ねぇスラップ君!!」

「なんだよ、その勝ち誇った顔はよ・・・
 せっかくのメシが不味くなる、こっち向くんじゃねぇ」

「なんだオマエ悔しいのか、あぁん?」

「おい珍獣、オレに喧嘩売ってんのか?
 いいぜ、今なら高額買取中だコラァァァァ!!」

「お主等人様の家でやめぬか!!
 まったくいつもいつも・・・」

「ははは、賑やかでいいじゃありませんか。」

「そうね、あらラキ?」

母親はラキの口の周りにべっとりついたソースを拭き取る。

「ママ、ありがとぉ!!」

「まったく、まだまだ子供ねぇ」

「ははははははは」


その日はみんなが楽しく笑い、楽しい食事だった。
オレにもこんな日が続くと思ったんだよな・・・

毎日山に狩りに行って、家に帰ったら
親父とお袋とメシを食って、その日の狩りの事を話したり・・・

そんな何の変哲もない、いたって普通の日常。
それがガイア、エイス、オージ等の仕業で突然失われてしまった・・・

必ず、必ず仇は取るよ、村のみんな、親父、お袋・・・