第十三話
ハンター


薄暗い部屋のベッドの上に横たわるエイス。

そしてエイスの下半身にまたがるシャナ。

二人は裸のまま重なり合い、シャナはエイスの上でゆっくりと上下に動く・・・

「ん、エイス様・・・」

「・・・・・・」

シャナは熱を帯びた体を淫らにゆっくりと、ときに激しく動かすが、
エイスは何も反応を示さず、いつもの冷たい表情のままだった。

「エ・・イス様・・・?」

「もういい、降りろ・・・」

そう言いエイスはシャナをどかせ、ベッドから降りた。

「エイス様・・・」

「オマエの心の中には私とは別の男が映っている・・・」

「・・・・・・」

エイスは服を着直し、背中を見せたまま続ける。

「その男も私は誰だか知っている。
 貴様が何のために私に近付いたのかもな・・・」

「私は・・・それでも、あなたが・・・」

シャナは顔を伏せ、呟いた。
そのときだった、エイスの部屋にあるスピーカーのような物から着信音が鳴ったのは。

「なんだ?」

『お休みの所失礼します!!
 エイス様、大変な事が起きました!!』

「申してみろ。」

『リヴァレ様とヴァファム様が・・・
 リヴァレ様とヴァファム様が倒されました!!』

「なんだと・・・?」

『その場にいた兵によりますと、
 リヴァレ様はデジュン一行に。
 ヴァファム様は謎の三人に敗れたとの事です・・・』

「謎の三人・・・」

『詳しい事は不明ですが、
 それぞれ銃、棺桶、そして巨大な剣を持った三人との事です。』

「その三人をマークし、風の場所は今後も見張っておけ。
 それと、この話は隊長クラスのみとする。」

『了解しました、それでは・・・』

通信は消え、エイスはその場で考え込む。

(リヴァレがデジュン達に倒されるのは有り得るとして、ヴァファムを倒せる人間がこの世にいるとは・・・
 まさかそこにデジュン達以外の『適格者』・・・いや、『超越者』の方か?
 適格者だった場合、風はもう手遅れだな・・・)

「シャナ」

「はい・・・」

「兵に『火』の捜索を急がせろ、
 それとオージを呼び戻せ。」

「了解しました・・・」

まだ服を纏っていないシャナを残し、エイスは部屋を出た。

「私はどうしたらいいの・・・?オージ・・・」





「てかよ、あの変態は一体何やってるんだかな?
 全然連絡ねぇじゃんよ!!」

デジュン一向はユビナメ村の住民より
近くの町の場所を聞き、そこへ目指し歩いてた。

「確かに連絡がない以上、人が集まる場所で情報収集するしかないのう。」

「ところでリアナ、オマエ精霊に何か言われなかったか?
 世界の真相がどうとか。」

「確かに言われたが・・・
 儂が聞いたのは、ガイアがこの星の創世より存在する神であるということだけじゃ・・・」

「神だと!?
 精霊達はオレ達に一体何を隠しているんだ・・・」

冷静に呟くスラップの隣でデジュンは

「ガイアは神なんかじゃねぇ!!
 オレやリアナの村、ユビナメ村をあんな様にする奴が神な訳ない!!」

熱くなるデジュンを静めるように、リアナは手をデジュンの頭に乗せた。

「分かっている・・・分かっているのじゃ。
 じゃがエイスやオージ、そしてガイア・・・
 奴等を止めねばならんのは確かじゃが、
 それだけではこの戦いは終わらない気がするのじゃ・・・。」

「かもしれん・・・
 だが何も分からない以上は今出来ることをするしかないな。」

「今度こそはオレが精霊と会う番だろ?
 そのとき無理矢理でも聞き出してやるさ!!」

「その意気だデジュン!!」

突然の声に三人は辺りを見回す。

「聞き覚えあるぞよ、この声は・・・」

「やっと現れたか変態め・・・」

呟くデジュンの後ろに、その男は現れた。

「ふむ、どうやらリアナは精霊の加護を得れたようだな。」

「ああ、あとはデジュンの精霊、最後の勇者とその精霊だけだ。
 登場が遅れたからにはちゃんと情報は仕入れてるんだろうな?」

「まかせたまえ。
 この先に『ドンダケ』という町がある。
 そこでゆっくり話そうではないか。」

「勿体ぶりやがって変態め・・・」





デジュン達はドクターNについて行き、ドンダケに到着する。
そこは今までデジュン達が見てきた村とは比べ物にならないほど栄えていた。

「すっげぇな!!なんか一杯店があるぞ!!」

「オマエ、そんなキョロキョロすんなよ・・・
 一緒にいるオレらまで田舎者と思われるじゃねぇか。」

「あ?喧嘩売ってんのかロンゲ?」

「田舎者丸出しなんだよオマエは。」

「いつもはああなのか?あの二人は。」

ドクターNは喧嘩するデジュンとスラップを見て言う。

「まぁ、こんなもんじゃよ。」

「苦労するね、キミは。」

「そうじゃな。最後の仲間くらい常識のある人がいいのう。」

「HAHAHA!!
 次の仲間もクセ者なら更にキミの苦労が増えるね。」

「まったくじゃな・・・」

ドクターNは一つのレストランの前で立ち止まった。

「ここがいいかな。
 じゃあこの中で話そう。」

「お主等、そこまでにして店の中に入るぞよ。」

リアナの言葉に耳を傾けず、デジュンとスラップは殴り合っている。

「やれやれ、困ったもんだね。」

「お主等・・・」

「ん?」

リアナの右手に魔力が集中する。

「いいかげんにせぬかぁ!!」

そしてその魔力が飛ぶ先は・・・

「あぶぁ!!」
「へぶっ!!」

リアナの魔法をくらった二人は倒れてしまった。

「まったく困ったものじゃな。」

そう言いリアナは倒れた二人を引きずって店に入って行く。

「キミも十分クセ者だよ・・・」





とある町の裏路地、そこに背中に巨大な剣を背負った男が一人。

「来たか・・・」

「待たせたな。」

「いや・・・」

黒い服に金の甲冑と目立つ格好なのか
目立たないかハッキリしない・・・

それにオレに向けられたこの容赦ない殺気・・・
この男、只者ではないな・・・

「静かなる豪風と呼ばれるソール=ゲイン・・・
 先日のキミの戦い、見せてもらったよ。」

「・・・・・・」

「しかし『刻印』の力を使えばもう少しスマートに戦えたと思うが。
 それとも何か使えない理由でもあるのか、な?」

「!!」

「おおっと・・・」

一瞬でソールは男の後ろへ移動し、巨大な剣を男の首下へ向ける。

「貴様何者だ・・・返答次第では・・・」

「甘いな・・・」

男の声が前からではなく、後ろから発声された。
男はソール以上のスピードで後ろへ移動したのだ。
そして右手をソールの背中に当てる。

一瞬で移動!?
このオレが追いきれなかったのか・・・
それにこれは・・・

ソールは男の右手から発せられる凄まじいプレッシャーを
背中越しではあるが、危険に感じた。

「オレはオージ・・・
 キミと戦うために来た訳ではないよ。」

「オレに一体何の用だ・・・
 刻印の存在を知っているのであれば只者ではあるまい・・・」

ソールは動じず、オージと名乗る男に質問を投げかける。
そしてその巨大な剣で屠るチャンスを伺う。

「ハンター協会から話は聞いているのだろ?
 オレが今回のキミの仕事の依頼者だ。」

「ある者達を始末することか?」

「ああ。オレにも事情があって今は派手な動きは出来ないのだよ。」

そう言うとオージはソールの背中から右手を離れさせ、
腰のポケットから一枚の写真を取り出した。

「こいつらの始末を頼みたいんだが・・・」

オージの殺気が消えたのを確認し、
ソールはオージから手渡された写真を見る。

その写真には丸い珍獣一匹、男と女が一人ずつ写っていた。

「左からデジュン、スラップ、リアナの三人だ。」

「・・・冗談じゃない。
 オレが出るまでもないだろう・・・」

ソールは手紙をオージに突き返し、
早々に立ち去ろうとする。

「報酬は弾むが?」

「いらん・・・
 他のハンターにでも頼め・・・」

「キミだけの特別報酬・・・
 『神の世界へと続く扉』の情報・・・はどうだ?」

その単語を聞いた瞬間、ソールは立ち止まる。
そして背中を見せたままオージへ問い返す。

「何か知っているのか・・・?」

「キミよりは知っているさ・・・
 この依頼が成功した場合、オレが持っている情報を全て教えよう。」

「・・・いいだろう・・・
 その依頼引き受けてやる・・・」

「ああ、今こいつらはドンダケに向かってるはずだ。
 見た目に惑わされるなよ、かなりの強敵だからな。」

「任務・・・了解・・・」

それだけを言い残し、ソールは立ち去っていった・・・

「ククク・・・さて・・・」

オージは上を見やり呼びかける。

「オレに何の用だシャナ。」

オージの呼び掛けに応じ、シャナは上から現れた。

「今のはもしや『適格者』では・・・」

「ああ、その通りだ。」

「そうですか・・・ではやはりデジュン達のところへ?」

「それがどうした?貴様は一体オレに何の文句がある?
 貴様は所詮ジジイ共やエイスの慰み者、
 その分際でオレに立て付く気か?」

「そんな・・・ことは・・・」

「貴様を奴等の実験から助けたのは
 オレだといいうことを忘れるな。」

「はい・・・」

「で、何の用だ?
 何かエイスに動きが見られたのか?」

「はい・・・
 リヴァレとヴァファムが倒されました。
 そしてエイスが今後の作戦のためにとオージ様を御呼びです。」

「クックック・・・
 むしろ精霊の力をデジュン達が手に入れた方が手っ取り早いんだろ?
 奴はそれを知っているにも関わらず、この期に及んでまで自分の手を汚さないやり方を選ぶとはな・・・
 もう答えは出ているだろうに・・・」

「・・・・・・」

「よかろう、オレもすぐ戻ると奴に伝えろ。」

「は・・・」

それを聞いたシャナはオージの前から姿を消した。

「つくづく綺麗好きな坊ちゃんな事だ・・・
 昔の仲間の面影が残る奴等を自分の手で始末するのが嫌とはな・・・」

オージは上を見上げ、

「もうすぐ『鍵』を持った神子も現れる。
 運命の歯車は徐々に動き出す、か・・・
 クックック・・・」