第十二話
疑問


薄暗い祠の中を三人は精霊求めひたすら進む。

「どうだリアナ?
 結構奥まで来たが精霊は感じるか?」

「ふむ、共鳴はかなり強くなっているぞよ。もう少しじゃ」

「しっかし驚きだよな。
 いつのまにか魔石なしでも魔法使えるようになってるじゃん」

デジュンはリアナの魔法を放つ真似をしてみせた。

「あれは儂の力だけではないぞよ。
 あんな高レベルの魔法は魔石を使用しても扱えぬしな・・・
 これも精霊との共鳴がなせる業かのう。」

「て事は精霊の加護を受ければ今よりもっとパワーアップするてことか?
 いいなぁ・・・オレも早く欲しいぜぇぇぇ!!」

「おい、どうやら着いたみたいだぜ。」

スラップは奥のぼんやりと光るものを指差した。

「ふむ、どうやら儂だけに来いと言ってるようじゃ・・・
 すまぬが、しばし待たれよ。」

「ああ、じゃあオレ達はここで待ってるよ。」

「オレ、精霊見たことないから見たいんだがなぁ・・・」

二人を置いてリアナは精霊の元へ歩む。

「確かに精霊というだけあって凄まじい生命力を感じる・・・
 じゃが、何か迷いのようなものが・・・?」

『サラ・・・』

「!!」

目の前の一人の女性が現れた。
肌は青く、とても美しい・・・
リアナは彼女が精霊だと直感的にわかった。

「儂の名はリアナ、リアナ=フェズリールじゃ。
 お主が精霊か?」

「そう・・・私は水の精霊・・・
 今はリアナという名なのね・・・
 あなたがここに来た理由は分かっています。
 私の、精霊の加護を得たいのでしょう?」

「そうじゃ。
 儂等はこの世界を滅ぼさんとするガイアを倒すために・・・
 そのために力を貸して頂きたい!!」

「ガイア・・・ファルスティアの神・・・
 あなた達はこの星の神を倒すつもりですか・・・」

「神じゃと・・・?」

「ガイアはこの星の創世より存在する神、
 あなた達はそれに立ち向かおうとしているのです。」

「ガイアが神じゃと?冗談ではない!!
 あれは悪魔じゃ!!人間に害をもたらす悪魔じゃぞ!?
 一体お主等精霊は何を知っているのじゃ?
 知っている事があるのなら教えてほしい!!」

「・・・・・・
 答えは私からは言えません。
 しかしあなた達はいずれ真実を知る事になります・・・」

「一体何を・・・」

「まず勇者を四人全員揃え、四人の精霊の加護を得ること・・・
 その後ガイアの元へ向かいなさい、この世界の真実を知るために・・・」

そう言うと、水の精霊はリアナへ手を差し伸べた。

「さぁ私の手を取りなさい。
 そうすれば精霊の力を得ることになります。」

リアナは黙ったまま精霊の手を握る。
すると、リアナに不思議な力が流れ込んでくる。

これが精霊の加護を受けるという事なのか・・・?

「さぁ終わりました。どうですか感じは?」

「何か不思議な感じじゃ・・・
 儂は以前も同じような事があったような気がする・・・」

「そうですか・・・
 もう時間が来ました、リアナ・・・」

「!?体が・・・?」

精霊の姿がゆらゆらと揺らいだ。
それは蜃気楼のように、今にも消えそうである。

「少し力を使いすぎてしまいました・・・
 またしばらく眠りにつきます・・・」

「すまぬな、儂のために・・・」

「いえ、これも運命でしょう。
 それではリアナ、決してこの世界に失望せず
 頑張って下さい・・・」

そう言い残し、精霊は消えてしまった。

「儂等が知らない何かがあるのじゃな、この世界に・・・」





「あ、おいリアナが戻って来たぞ!!」

「どうやら精霊の力を得たようだな」

祠の奥から戻ってきたリアナに二人は駆け寄った。

「待たせたな二人とも。
 無事、水の精霊の加護は得たぞよ。」

「お〜これであとはオレだけか!!」

「いや、まだ勇者がもう一人いるはずじゃ・・・
 こればかりはドクターNからの情報を得たいところじゃな。」

「そうだな・・・
 とりあえず船に戻るか、船長も待ってるだろうし。」

そして三人はゴロンの船へと戻る。

「船長、戻ったぜ〜」

「お〜丸いの、無事だったか。
 どうやらやるべき事が終わったようだな。」

「ああ、ありがとう船長。
 ユビナメ村までも頼むよ。」

「あいよ、飛ばすんでしっかり捕まってろよ!!」

スラップの言葉を聞き、ゴロンはすぐ船の操縦に向かった。

「いや、出来ることならゆっくりお願いしたいのじゃが・・・」

「聞いてねぇぞあいつぁぁぁああああああ!!」

デジュンの言葉の途中でシェイド丸はもの凄いスピードで村に向かった。

「おおおおおお!!
 早すぎるってぇぇぇぇぇ!!」

もの凄いスピードのおかげで、
かなりの短時間で村に着いた。

「おえぇぇ・・・
 加減てものを知らないのかい・・・」

「デジュン!!
 そんなこと言ってる場合じゃないぞ・・・」

「あん?何よ。」

「これは・・・一体何が起きたのじゃ・・・」

先に船から降りたスラップとリアナが呆然としている。
デジュンはその二人の姿を見て何か嫌な予感がした。

船から降りた先には、思ったとおりの事が起きていた。

「おい・・・何だよこれ・・・」

そこには何匹ものクリーチャーが村を襲撃していた。
その姿は虫や鳥、獣と様々であった。

建物は破壊され、死体がいくつも転がっている。

「二人とも、まだ生存者がいるかもしれない!!
 クリーチャーを倒し、生存者を探すぞ!!」

「了解じゃ!!」

スラップとリアナは急いで村へと向かう。
だがデジュンはそこから動けないでいる。

「オレの村のようにいくつもの人が殺されていく・・・
 なんで、なんでなんだよ・・・」





クリーチャーを倒していくスラップとリアナ、
精霊の加護を得た二人の前にクリーチャーの屍の山が出来上がっていく。

「こいつら強さ自体はたいしたことないが数が多すぎる・・・!!
 これじゃ生存者を探すどころじゃないぞ・・・」

「そうじゃな・・・このままでは儂の魔力もすぐ尽きてしまうわ・・・」

そんなとき、どこからか子供の声がした。

「!?」

「まずい!!あの子供クリーチャーに囲まれている!!」

「ここからでは間に合わないぞよ!!」

まだ10歳にも満たない少女へとクリーチャー達は一斉に飛び掛かる。




「二人が戦っているのにオレは何をしているんだ・・・」

『アナタガタタカウノハナゼ?』

「みんなを守りたいから・・・」

『アナタノソノテハ、ナンノタメニアルノ?』

「みんなを守るために・・・」

『アナタハオリジナルノ・・・』

「!!」

『コノセカイデモアナタハ・・・』

「そうだ!!
 オレは戦う!!この世界も滅ぼさせないために!!」

デジュンはクリーチャーに襲われそうになっている少女へと
物凄いスピードで向かった。

その場から少女への距離は100m程であったがまさに一瞬だった。
少女の回りにいたクリーチャーが一瞬で消滅したのだ・・・

「今のは・・・デジュン・・・?」

「クリーチャーが肉片一つ残さず消滅・・・
 デジュンにあんな力が・・・」

「嬢ちゃん、大丈夫か?」

少女は恐る恐る目を開け、回りを見出した。
先程まで自分を襲おうとしていた化け物は消え、
代わりに丸い珍獣がいた。

「え・・・丸いお兄ちゃんが助けてくれたの・・・?」

「ああ。嬢ちゃん、お父さんやお母さんは?」

「まだ家の中に・・・」

そう言うと少女は燃え盛る家を見た。

「あそこか・・・
 わかった、スラップとリアナはこの少女を見ててくれ!!」

「火の勢いが強すぎていつ崩れるかわからない。
 気を付けろよデジュン!!」

デジュンは無言で頷き、少女の家へ向かう。

そしてデジュンが突入して5分程経っただろうか。
その家は凄まじい音を立てて崩れていく。

「お兄ちゃん!!」

「大丈夫ぞよ、デジュンなら・・・」

リアナは少女を抱きしめ言う。
しかしリアナも少女と同様心配であった。

だがデジュンは無事、崩れた家の中から現れた。
二人の夫婦を背負って・・・

「パパ!!ママ!!」

少女は父と母に抱きついた。
そして父と母も自分の娘を強く抱きしめる・・・

「ああ、なんとお礼を言っていいのか・・・」

「ありがとう、丸いお兄ちゃん!!」

「良かったな、お父さんとお母さんが無事で。」

(父親と母親か・・・
 オレがもっとしっかりしていればオレの親も助かったのかな・・・)

「リアナ、この子のお父さんとお母さんの火傷を治す事、出来るか?」

「出来るが、お主の火傷の方が酷いのでは・・・」

「オレは大丈夫だ、先にこの二人を頼む。」

「了解じゃ、では・・・」

リアナは両手を二人の前に持って行き、
魔法詠唱を始めた。

リアナの手から発せられる不思議な光を浴び、
二人の火傷は見る見る内に消えていく。

「これでOKぞよ。」

「本当にありがとうございます・・・
 ここまでして下さるなんて・・・」

「いいってことよ!!
 オレ達はそのために戦っているんだし・・・」

そう言い、デジュンはスラップとリアナに向き直る。

「まだ他にも生存者がいるかもしれない。
 手分けして探そう!!」

「ああ、まだクリーチャーがいるかもしれない。
 あんた達はなるべくオレから離れないようにしてくれ。」

スラップは三人の親子と共に他の場所を探す。
そしてデジュンとリアナは・・・

「あつつつつ・・・」

「カッコつけすぎじゃ、バカ・・・」

デジュンはリアナに魔法で治療してもらう。

「いやぁ、一応主人公じゃん?
 キメるときはキメないと・・・」

「意味がわからぬわ。それより・・・」

「ん?」

「いや、何でもない・・・」

(こやつは儂等とは違う力を持っているということなのか・・・
 あの時のこやつは、精霊の加護を得た儂等以上であった・・・)





「どうやら生存者はこれだけか・・・」

しばらく探した結果、生存者はほんの10人も満たなかった。

「この村ももう終わりです・・・
 我々は他の村に移住しようかと思います・・・」

「そうか・・・
 あまり力になってやれなくてすまない・・・」

謝るスラップに住人達は首を振る。

「いえ、そんな事はありません・・・
 あなた達がいたからこそ我々は生き延びられたのです・・・」

そして住人達は村を出る支度を整える。

「もうこんな事は二度と繰り返させない・・・」

「デジュン・・・」

「そうじゃな・・・
 そのためにも儂等が頑張るしかないのじゃ・・・」

(ガイア、クリーチャー・・・
 もしかしたらオレ達は何か勘違いしているんじゃないか・・・?
 それにあの声・・・何か、何かが引っ掛かる・・・)