第十一話
海の底での戦い


「おら、目的のカイリーン海域に着いただぁよ」

目的地に着き、船長のゴロンはデジュン達の元へ行く。
そこで船長が見たのはぐったりしている二人+一匹の姿であった。

「おえっぷ・・・もう少し何とかならなかったのか・・・」

「やはりボロい船じゃったな・・・」

「さすがに丸いオレもこの船酔いは・・・」

「なんでぇなんでぇ!!
 だらしねぇなぁ、こんなもんの揺れでよ!!」

「いや、すまない・・・
 とりあえず目的地には着いたようだな・・・うぷ」

「とりあえず礼は言うぞよ・・・」

「おおよ!!
 だがこっからオメェ等どうすんだ?
 見渡す限り海なんだが・・・」

船長の言う通り、周りには島一つ見えず、視界には海しかない。

「確か海の底だったよな・・・
 スラップ、どうすんだ?」

「いや、オレに聞かれてもな・・・」

「この底に精霊がいる・・・!!」

何か感じ取ったのかリアナが呟いた。

「リアナ、分かるのか?」

「ああ、これがお主の言っていた精霊との共鳴なのじゃろうな。
 確かに何か不思議なものを感じるわい・・・」

「て事は今回の精霊はリアナなのか!!
 ・・・またオレじゃないのね・・・(´・ω・`)」

「まぁそんな気を落とすな。
 しかしどうしたものかね、底に潜る手段が無いしなぁ・・・」

「あっ!!」

何か思い出したように船長は船の倉庫に向かった。

「どうしたのじゃ船長は・・・」

すると船長は、人の頭がスッポリ入りそうなガラスのメットを三つ持って来た。

「そいや、白タイツの変態からこれをオマエ等にと預かってたんだわ。」

「なるほど、これがあれば海の底まで行けるな。」

「ホントに用意がいいのぅ・・・」

「オレは体ごとスッポリ入るんすけどね・・・」

三人はガラスのメットを被る。

「すまないが船長、オレ達が戻るまで船をここに停めてもらっていいかな?」

「当たり前だろ、オメェ等はこの船がなけりゃ村に戻れないしな。」

不本意だが、帰りもこのボロ船に乗らなければならない。
またあの揺れを経験すると思うとぞっとした。

「よし行くぞ!!」

「了解じゃ!!」

「主人公なのに、最近はスラップが仕切ってるなぁ・・・」

三人は同時に海へと飛び込んだ。
まだ見ぬ精霊を求めて・・・



しばらく潜っていると、ある祠が見えた。

(どうやらアレのようじゃな・・・
 共鳴がどんどん大きくなるわ・・・)

祠に入ってみると、そこはぽっかりと空洞になっていた。

「どうやらここには空気があるみたいだな。
 しっかし、あんな窮屈なメットに体が丸ごと入ってたらしんどいわ・・・」

「オマエはそうだろうな。
 だが服がビショビショだ、風邪引かないうちにさっさと済ませようぜ。
 どうだリアナ、精霊との共鳴は?」

「どんどん大きくなってるぞよ。
 ここで間違いない。」

リアナはキョロキョロすると、ある一点を指差した。

「あそこじゃ。あそこの奥に精霊がいる。」

リアナが指差した先に、
大きな胸がこぼれ落ちそうな程露出が激しい派手なボンテージ姿の女性が見えた。

「あれか?あんなもんなのか精霊て。
 かなり派手なお方ですが・・・」

「いや違う・・・
 オレが見た精霊はもっと不思議な感じがしたが・・・
 てか普通に考えてあんな露出する精霊ておかしいだろ。」

「何者じゃお主は!!」

「ふふ、あなた達を抹殺する者よ・・・」

そう言うと女は水で作り出したいくつもの刃を三人に投げつけた。

「あぶねぇ!!
 なんだあの女は!!」

「どうやら精霊ではないらしいな。
 ガイアの手下か!?」

「あはははは!!
 あたしは四天王の一人、リヴァレ!!
 あなた達に精霊を渡すわけにはいかないわ!!」

「破廉恥な女め!!
 儂等の邪魔をするというのなら容赦はせぬぞ!!」

リアナは腰の袋から魔石を取り出した。

「この田舎娘が!!
 アシュラを倒したくらいでいい気になってんじゃないよ!!」

「田舎娘か・・・
 ふ、お主面白いのう。
 ではその田舎娘の力を見せてくれるわ!!」

「お、女同士の争いだわ・・・」

「やばいな、デジュン離れたほうがいい。」

スラップはデジュンの手を掴み、急いで二人から離れようとした。
だが時既に遅し、リアナとリヴァレの攻撃が炸裂し、二人はその爆風で吹き飛ばされた。

「く!!これがゲミル族の魔法か!!」

「いやこれはアシュラ戦より凄まじいぞ!!」

お互いの攻撃後の煙から二人の姿が見えてきた。
ほぼ同威力で相殺されたのか、共に無傷である。

「やるわね田舎娘!!
 少し侮っていたわ・・・」

「まだまだこんなものではないぞよ!!
 消し去る前に聞きたい事がある。
 罪の無い人々を無差別に殺し、お主等は一体何が目的じゃ?」

「あたしを消し去るなんて無理だと思うけど。
 それにしても罪の無い人・・・ねぇ。」

「そうだ!!クリーチャーを操り、オレの村を破壊しやがって!!
 ガイアの目的はなんだ!!」

「く、あははははは!!
 クリーチャーを操り、罪の無い人々って笑わせないでよ。
 あなた達、本当に何も知らないのね。
 それでも本当に勇者の転生なの?」

「なんだと・・・?」

「コケにしやがってぇ!!
 村のみんなの仇だ、行くぜぇ!!」

デジュンはリヴァレに向かって行った。

「あなた達ではあたしは倒せないわよ。」

スカッ

「はぶっ!!」

デジュンの猛攻空しくリヴァレをすり抜け、地面に落ちてしまった。

「すり抜けた・・・何をやった!?」

「なぁんにも?
 言ったでしょ、あなた達じゃあたしの足元にも及ばないのよ!!」

リヴァレは振り上げた右手から無数の水の刃を飛ばした。

「危ない!!」

リアナはデジュンとスラップの前に行き、魔法でバリアを作り出した。

「すまねぇ、助かったぜ・・・」

「あやつには何かタネがありそうじゃな。」

「今度はオレがやってみるさ。
 この大地の精霊の力でな!!」

スラップはバリアの中から抜け出し、空高く舞い上がる。

「はああ!!流星落!!」

しかしそれでもスラップの攻撃もすり抜け、
リヴァレが立つ地面に大きな窪みを作り出す。

「ふふ、直撃したらさすがのあたしもやばいわね。」

「オレの攻撃でもダメか・・・」

「おい、何か体が・・・」

「どうしたのじゃデジュン?
 う・・・!!」

「やっと効いてきたわね、特性の麻痺薬よ。
 この部屋に来た時に薬をバラ撒いておいたの。」

「き・・・たねぇ事しやがる・・・!!」

「しかしお主もバカじゃの・・・
 致死性の毒ならすぐに勝負は着いたというのに・・・」

「すぐお終いはつまらないでしょ?  ジワジワと拷問しながら殺してあげるわよ。」

「見た目通り女王様気取りかよ・・・悪趣味な女だな。」

「あなたは美形だから最後にじっくり可愛がってあげるわ。
 簡単にイケるなんて思わないでね・・・
 まずは・・・そうね、丸い珍獣からいこうかしら。」

「オレかYO!!
 なんでいつもオレばっかり・・・」

「あなたは焦らさずすぐにイカせてあげるから心配しないで。」

リヴァレは倒れているデジュンの頭目掛けて水の刃を突き刺そうとする。

「ああああ!!死ぬ〜〜!!」

「デジュン!!」

間一髪、スラップが水の刃を掴みデジュンは一命を取り留めた。

「助かったぜスラップ・・・」

「ああ、だがこれはさすがにまずいぜ、
 オレも体が動かなくなってきやがった・・・」

「二人仲良くイキたいのならそうしてあげましょうか?」

リヴァレは水の刃をスラップとデジュンの両腕に刺した。

「ぐあぅ!!」

「このアマ・・・!!」

「それでまだ体を動かせたとしても
 両腕は地面に水の刃で刺さってるから
 私に攻撃することや逃げられる事も出来ないでしょ?」

「く、デジュン、スラップ・・・」

「リアナ!!オマエは逃げろ!!」
 ここで三人殺されたらもう取り返しが着かない!!
 せめてオマエだけでも・・・」

リヴァレは騒ぐスラップの右足に水の刃を刺した。

「ぐあ!!」

「逃がさないわよ、あの田舎娘もね。
 さぁそろそろ二人の頭にブスっとイキましょうか。」

「あ、ああ・・・」

儂はまた大切なものを目の前で失うのか・・・
そんな事は嫌じゃ!!
じゃがこの体では魔石を取り出す事が・・・
魔法詠唱、それしか・・・

出来るのか?今の儂に・・・

やるしか・・・ない!!

リアナはそう決意し、魔法の詠唱を行い始めた。

「っ!!」

リヴァレは後方からプレッシャーを感じ振り向いた。
そこで見たのはリアナの体から発せられるとてつもない魔力のオーラだった。

「なっ、シャナの情報では田舎娘は
 魔石無しでは魔法は発動出来ないはずでは・・・!?」

(魔力が高まるのがわかる・・・
 よくわからぬがこれはいけるぞよ!!)

「おいスラップ!!
 リアナがすんごい魔法を撃ちそうだぞ!!
 これは期待していいんじゃないのか?」

「ああ、だがこの状態ではオレ達も巻き添え喰らうんじゃないか?」

「あ・・・」

そんな事を言ってる間にリアナはリヴァレ向けて光の球を撃った。

「くっ!!そんな魔法がぁぁ!!」

リヴァレは光の球を打ち消すべく、無数の水の刃を放ったが
それでもリアナの魔法は揺らぎもせず真っ直ぐにリヴァレに向かって行く。

「おい!!マジかよ!!
 オレ等もいるんだぞ!!」

「リアナを信じろデジュン・・・」

「オマエが巻き添え喰うって言ったんだろぉがぁ!!」

「この田舎娘がぁぁぁぁぁぁ!!」


チュドォォォォン!!


「やった・・・のかのぅ・・・」

そこにはデジュンとスラップしか存在せず、
リヴァレの姿は無かった。

「どうやら無事のようだなオレ達・・・」

「オレの言った通りだろ?
 だがどうやらあの女は物理攻撃はダメでも魔法攻撃は効いたみたいだな。」

「儂にも魔法詠唱が出来た・・・
 いや今は体の毒を解毒せねば!!」

リアナは魔法で自らの体の毒を抜いた。
そしてデジュンとスラップの毒も抜き、
二人の体の傷も回復させた。

「サンキューなリアナ!!
 オマエの魔法のおかげで助かったぜ!!」

「だがいつにも増して魔法が強力だったな?
 近くに精霊がいるから力が増幅されているというのか。」

「かもしれぬ・・・
 魔石無しでも魔法が使えたのもそれが理由かもしれぬな・・・」

「よっしゃ!!ガイアの刺客も倒した事だし、
 さっさとリアナに精霊の加護を与えてもらおうぜ!!」

「そうじゃな、まぁ難しい事は後からでもいいじゃろう。」

三人は精霊がいると思われる祠の奥へ進んだ。