page.0
prologue


ファルスティア暦1600年 3月25日

私は今一人の男を捜している。
あの事件の真相を知るために・・・

「ドンバーテン・・・ここだわ。」

バーの入口の扉を開るとそこにはまだ昼間にも関わらず、
酔っ払いの男達で盛り上がっている。

「こんな時間にお酒とはね・・・
 少し平和ボケが過ぎるんじゃないかしら。」

「いらっしゃい、女の子が来るなんて珍しいな。
 何を飲むんだい?」

「悪いけど今日は飲みに来た訳ではないわ。」

バーテンダーの注文を断り、店内を見渡す。

「あの男かしら・・・」

私は鞄から一枚の写真を取り出し、隅でテーブルで酒を飲んでいる男と見比べた。
間違いない、あの男だ。

「エイジ=ゼノサキス・・・よね?」

その名を聞き、男は顔を上げた。

「誰だオマエは・・・」

「私はカレン=ウェザーズ、新聞記者よ。
 あなたに聞きたい事があるのだけど。」

「失せろ、オレはオマエに用はない。」

「かつて三強ハンターと呼ばれた一人、『ミラージュガンナー』・・・
 1597年にハンター協会で起きた事件の真相を教えて欲しいのよ。」

「何度も言わせるな、オマエが知る必要はない。」

「これでもそう言える?」

鞄から取り出した一枚の写真をエイジに見せる。

「っ!!」

その写真にはサングラスをかけた褐色の肌の丸い珍獣、
2メートル程の大きさのロボット、そして
ウエスタンハットを被り、
上はヘソが丸見え、胸のみやっと隠れる程度の白いシャツにピンクのジャケット
下はデニムホットパンツとかなり露出が激しく、派手な格好をした少女が写っていた。

「こいつをどこで見たんだ!?」

先程の冷たい態度から一変し、エイジはカレンに写真の少女の事について聞く。

「タダでは教えないわ。
 あなたが私に事件の真相を教えてくれれば、
 私もあなたにこの少女の居所を教えてあげる。」

「・・・分かった。
 だがハンター協会は去年12月に解散したと聞くが、
 今更それを知ってどうする?」

「そうね、大量のクリーチャーに崩壊寸前まで攻められ、
 その事件でハンター協会会長が死亡したわ。」

「ああ・・・」

「私は真実を報道したいのよ・・・
 その会長にも色々悪い噂はたくさんあったわ。
 あなたもその被害者なのでしょ?」

「・・・・・・」

「あなたほどの力があれば何とか出来た訳ではなくて?」

「オレには何も出来なかったさ・・・
 それにオレはあの事件で瀕死の重傷を負い、二年近く寝たきりだったしな。」

「ということは目覚めたときには既にハンター協会は解散、
 あなたに重症を負わせた会長は死んでいたということ?」

「ああ、会長は死に、クリーチャーが存在しなくなった今、
 ハンター協会など無意味なものになったのだろう。」

「何かが起きたのよ、1599年5月に・・・
 その月からクリーチャーはこの世から姿を消したんだしね。」

「ああ。
 そしてファルスティアに落下しようとした隕石、
 この星を隕石から守るように現れた光の帯・・・  オレが寝ている間に様々な事が起きたようだ・・・」

「その辺りの事も調べる予定だわ。
 でもその前にあなたの経験した事を教えて欲しいの・・・」

「ああ・・・
 場所を変えよう、ここは騒がしすぎる。」

「・・・いいけど、怪しいところに連れてかないわよね?」

「・・・・・・オレは妻子持ちだ。」

「知ってる。冗談よ、冗談。
 そんな怖い顔しないでよぉ・・・」


これが私と彼との出会い・・・
これから私は真実を知ることになる。

あの悪夢の日々の真実を・・・